一般財団法人 環境イノベーション情報機構

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このゆびとまれ!エコキッズ

学校の生き物

目的

  • 気づき:身近な世界にさまざまな生きものが生息していることに気づく
  • 知識:都市空間に生きものがうまく適応していること、逆にいうと適応せざるを得ない状況に追い込まれている現実とその仕組みについて理解する
  • 行動:身近な自然や生物とのふれあいを意識して行動に反映できる

背景

身近な生物が減り、身近な自然に向ける目も消えつつある

都市化の進行に伴う開発や里山の管理放棄などによって、身近な生物が減っています。一方で、子どもの側でも自然の中に出て昆虫などの生物と触れ合うよりも、家の中でのテレビゲームなどを主流とした遊びのスタイルに変わってきています。

都市化に適応する生物

生物側にとって、都市化等による生息域の減少・変化は、生活適応のための戦略の変更を余儀なくされました。多くは適応できないまま姿を消していますが、中にはコンクリートのビル群を岩山とみなしたり、屋敷林や神社の鎮守の森などに住みつくなど、適応している例もあります。トンボをはじめとした水を必要とする生物も、学校のプールなどを繁殖 ・棲息の場とすることで都市化に適応しています(ただし、プールでは羽化に必要な水草の不在や、水を落としてしまうなどによって世代が完了しないことも多い)。トンボが一匹飛んでいるという何の変哲もない光景も、その背景としては都市の「自然」を舞台にした生態系が成立していることを証明しているのです。

変わる自然との関わり方

一方、人間側の意識の変化も留意する必要があります。かつて野山を駆けめぐり、虫や川魚などを追い求めていた子どもたちの光景は、近頃あまりみられなくなり、虫は捕まえるために探し歩くものというよりも、買い求めるか、偶然出会うかもしれないもの、もしくはハエ ・カ ・ゴキブリなど疎まれる存在でしかなくなってきつつあります。また、かつては遊びや生活の中で伝承されていた自然の神秘や仕組み、自然の中で発揮してきた人間の知恵なども、本や映像などバーチャルな世界での情報が多くなっています。都市の中でも息づいている生きものたちの世界も、人間側の意識が行かないと全く見えてきません。生物との出会いが偶然を期待するものであるならば、その偶然の出会いをうまく生かして子どもたちの好奇心や探求心を発展させていくことも必要だといえます。

水辺環境の減少が、プールにヤゴを押しやった

「ヤゴ救出作戦」に関しては、排水溝から流されてしまうヤゴをプールから救出してやるんだ!という正義感や愛護精神だけで終わらせてしまうのではなく、なぜプールにヤゴがいるのか、その背景として河川の暗渠化や道路のアスファルト舗装、コンクリート建造物など人間活動の広がりに伴う、都市部の水辺空間の著しい減少があることをしっかりと理解していく必要があります。また、どういう種類のトンボが繁殖しているのか、それによって自然の池とプールなどの人工環境では何が違うのかなどについても理解を促していくことも必要といえます。

ヤゴの飼育やトンボへの羽化の観察などを通じて自然の神秘や生命の尊さなどを教えることも大事ですが、同時にまた生態系の視点も重視したいところです。救ったヤゴを、地域の池に放せば池の中の生態系を攪乱することにもなります。地域の環境が保持できる以上の数のトンボが生きのびることが、生きのびたトンボにとっても、また地域の生態系にとってもいいことかどうか。ではどうすればいいだろうかということもぜひ考えていきたいところです。

発展

適材適所に分化する生物と、人間活動の影響

陣取り合戦

生物は、他の生物や環境そのものと相互に深い関わりを持ちながら、全体としてのバランスを保っています。地域の環境の中で、捕食形態や活動時間帯、あるいは分布を変えることで競合を避け、結果としてさまざまな種がモザイク状に適応することになります。これは、同じ条件で生き延びようとする種同士の競合に負けた側が淘汰された結果の裏返しでもあります。

こうして、種はそれぞれの不得意分野を克服するよりも得意分野を伸ばし、それによって独自性を見出し、他の種と競合しない条件を確保しながら生き延びるという戦略を取っているといえます。

突然の舞台転回

人間がその活動を広げるとともに、人間のまわりの生き物たちもその生息環境を変えられることになりました。開発や都市化による生息環境の直接的な破壊 ・改変という以外にも、人間活動の結果による生息環境の変化が問題を発生させている例があります。特に近年大きくクローズアップされてきている2つの問題について以下に取り上げます。

その1 帰化種の脅威

近年の人間活動の拡大による世界規模の移動の頻繁化に伴い、本来の分布を大きく越えて繁茂する生物が増えてきており、その影響が大きな問題としてクローズアップされるようになってきました。

こうした種は、元もとの分布域と似た環境に、意図的 ・非意図的に持ち込まれて定着したため、寄生者や捕食者がないことも多く、帰化先で同じような捕食や分布で適応していた地域の固有種と競合したり、また餌生物となる地域の固有種を食い尽くすほど大繁殖するなど、さまざまな問題を生じています。この結果、地域の固有種を絶滅に危機に追いやるほど、多大で深刻な影響を及ぼす場合もあると考えられています。

環境庁のレッドデータブックでは、イリオモテヤマネコやアマミノクロウサギなど特殊な地域の特殊な状況にある種だけでなく、少し前までどこにでもいて「めだかの学校」と唱歌にも歌われているメダカや、秋の七草としてもっとも身近な野草であったはずのフジバカマやキキョウなども絶滅危惧種として登録されています。これらの種が減っている理由として、生息環境の破壊や分断だけでなく、帰化種の影響も無視できないと考えられています。なお、こうした影響は、生態的攪乱と呼ばれています。

その2 地球温暖化と生物多様性

地球温暖化の影響についてはさまざま議論されています。地球温暖化問題は、人間活動の拡大に伴う化石燃料の燃焼等で排出される膨大な量の二酸化炭素や、その他人間活動に由来するメタンやフロン等の温室効果ガスの放出が原因物質となり、地球大気のバランスを自然の状況では起こり得ないほど急速に乱していることが問題とされています。

こうした急激な温度変化が生じると、地域の環境に適応してきた生物が、変化した環境に適応できるだけの時間的余裕を持てないまま絶滅してしまうことが危惧されています。

ビオトープと、快適な生活空間

ビオトープとは

ビオトープとは、「自然の状態で多様な動植物が生息する環境の最小単位」という普遍的な単位であり、広大な自然空間の区分にも用いられる概念を意味します。しかし環境保全の視点からは、特に人間活動によって改変された市街地や農耕地などの地域にわずかに残ったり、また新たに創り出した自然地域を指し示すこともあります。これは狭義のビオトープと捉えることができます。

多様な環境の確保と、生活空間の快適性

学校の校庭や休耕田などでビオトープづくりが盛んに行われていますが、あえてビオトープといわなくても、昆虫がふえるには雑草を刈らないなど多様な環境を確保すればいいわけです。しかし、一方で快適な生活空間の確保のため、雑草は刈り取られることが多いという現実もあります。園芸の愛好など自然とのふれあいを求めることも多くなってきていますが、多くの場合「雑草は抜くもの/刈り込むもの」という固定観念が強いといえます。自治体でも「雑草条例」や「草刈り条例」を制定しているところがあります。雑草が繁茂して周囲に迷惑を及ぼさないよう、適正な管理をしていくこととしています。

管理の目的

近頃は、セイタカアワダチソウなど外来の帰化種が繁茂して、日本の植物群落の多様性が失われているケースも多く、在来の生態系を保護するために帰化種の侵入や分布拡大を防ぐという管理も行われています。こうした管理のあり方と、整った景観の維持という観点から在来種も引っくるめて刈り取られるケースでは、意味合いが大いに異なるといえます。

関連情報

公益財団法人  日本生態系協会
〒171-0021  豊島区西池袋2-30-20  RJプラザ3F
TEL: 03-5951-0244
FAX: 03-5951-2974
http://www.ecosys.or.jp/
ヤゴ救出ネット
〜プール生物で交流学習!〜
http://rika.yochisha.keio.ac.jp/yagokyu-net/index.htm
http://rika.yochisha.keio.ac.jp/yagokyu-net/2007.htm
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