一般財団法人環境イノベーション情報機構
このゆびとまれ!エコキッズ

田んぼの生き物

目的

  • 気づき:田んぼのまわりにはさまざまな生物が息づいていることを知る
  • 知識:人間のつくり出した田んぼという人為生態系に適応した生物の多様性とその意味を理解する
  • 行動:生態的多様性を保全する活動に積極的に関わる

背景

季節によって変化する水田環境

日本では、2300年以上前に稲作がはじまって以来、谷筋の湿地から平野部の河川の後背湿地まで、広大な面積の低湿地が水田へと姿を変えていきました。農水省の統計によると、昭和43年(1968年)のピーク時には、約330万ヘクタールに達し、これは全国度面積のほぼ9%に及びましだ。

田んぼは、一年中水を湛える湿田もありましたが、多くは春先の田植えの時期になると水を張って、収穫期に水を落とすというように、年間の一時期にだけ水のある状態をつくっていました。毎年、季節の変化に伴って周期的に変化する環境が形成されることになりました。

田んぼの一年

水田の1年は春の田起こしからはじまります。水を落として干上がっていた土を荒く掘り起こし、4〜5月頃に水が張られます。春先に、水深わずか数cmながら突如として全国一斉に湿原が出現することになります。

田植え前に代かきをして土の塊を砕き、泥状にこね上げると、泥湿地ができあがります。土中で休眠卵として冬を過ごしていたプランクトンやタニシなどが姿を現しだし、それらを餌にして水生昆虫や、カエルやサンショウウオなど両生類の幼生、またトンボの幼虫のヤゴが生長します。ゲンゴロウやミズカマキリ、タガメ、タイコウチなどの水生昆虫は、冬にはため池で越冬し、春になって田んぼに水が張られると水田に移動して繁殖し、孵化した幼虫が夏の間に温かい水田の中で生長して、秋に再びため池に戻っていきます。

水田は、天候や気温の変化によって水位を調整することで稲の生長をコントロールしています。また、大雨時などには、ときに増水して濁流が流れ込むこともあります。濁流を遡ってナマズやドジョウ、コイなどが産卵のために水田に上がってきます。孵化した稚魚は、水温の高い田んぼの中で幼年期を過ごし、生長して再び水路を辿って下流域に下っていきます。

実りの秋には水田の水は落とされ、地面は乾燥します。稲刈り後には、落ち穂や刈り取った稲の間から落ちてきた昆虫などが逃げまどい、これらをねらって、スズメやムクドリなどさまざまな鳥類が集まってきます。鹿児島県出水市ではナベヅルやマナヅルが渡ってきて、落ち穂やドジョウ、タニシなどの小動物を餌にして冬を越しています。

重労働だった田の作業

稲作の歴史は、害虫と雑草との戦いの歴史でもありました。いかに農作業を省力化して収量を増やすかということが目標とされてきました。殺虫剤や除草剤が開発されて、農業の場面で使われるようになると、作業はグッと楽になりました。また、かつて多数の人手を必要とした田植えや収穫なども、機械化の導入によって省力化が可能となりました。

こうした背景には、日本経済の高度成長期を境とした、農村の労働力の都市への流出という問題を抜きには考えられません。都市と農村の所得格差が拡大し、農業後継者は激減し、新規就農者も減って、農村では人手不足や高齢化が深刻化しました。また、兼業比率も高まり農作業に割く時間も少なくなっていきました。こうした背景が必然的に農業の機械化を推し進めていったといえます。同時に、機械化に適合するため農地の大区画化や、完全排水による乾燥化のための用排水の整備などの大規模な圃場整備が進められることになりました。

農の多面的な機能・役割

水田管理の変化によって、日本の水田環境は大きく変わりました。緩やかな流れの水路を伝って田んぼとため池や河川などの間を移動していた水棲生物は、水路の流れが急になり、あるいは地下に埋設されることで、生活史を完了することができなくなり、多くが姿を消していきました。さらに、大量に散布される農薬等の影響もあって、水田の中には雑草も生えず、また虫や小動物もみられない田んぼも多くなっています。まさに、田んぼは米を生産するだけの場となってしまったともいえます。

このような状況は、しかし見直されつつあります。国の農政でも、農業基本法が見直されて、新たに「食糧 ・農業 ・農村基本法」が平成11年7月に公布 ・施行されるなど、農業を食糧生産のためだけでなく、環境保全などの役割も担うことを認めています。

発展

ウェットランドの重要性

ウェットランドとは

「ウェットランド(Wetland)」は、「湿地」と訳されることが多いのですが、湿地という語感から連想される湿った土地や湿原だけでなく、湖沼や河川などの陸水域や、干潟などの浅海域も含むより幅広い言葉として使われます。ウェットランド保全のための国際条約「ラムサール条約(正式には「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」)」第1条第1項では、ウェットランド(=湿地)の定義として、『湿地とは、天然のものであるか人工のものであるか、永続的なものであるか一時的なものであるかを問わず、更には水が滞っているか流れているか、淡水であるか汽水であるか鹹水であるかを問わず、沼沢地、湿原、泥炭地又は水域をいい、低潮時における水深が6mを超えない海域を含む』(環境庁野生生物研究会訳、1990)とされています。

ウェットランドの機能

今日、ウェットランドの重要性が見直されてきています。ひとつには、人間にとっての有用性があげられます。これまで不毛の地として、長く放置されてきた多くの湿地が、土木技術の発展に伴って新規開発の対象として干拓 ・埋め立てされてきました。しかし、ウェットランドは、水質汚濁や富栄養化の原因となる栄養塩類や有害物質を吸収 ・吸着して水質浄化に重要な役割を果たしていることがわかってきました。また世界中に広大な面積を占めるウェットランドは、総体として大量の炭素を蓄積して地球の気候安定にも寄与しているほか、魚介類などの産物が生み出す経済的価値や、レクリエーションや教育への利用など、人間にとってさまざまな形で価値を生み出していることが見直されてきています。

もうひとつの大きな役割として、ウェットランドは、地球上でもとりわけ多様な種類の生物が命を営む場として、今日熱帯雨林と並んで世界の注目を集めています。干潟などに多くの水鳥が羽を休めにくるのは、餌が豊富にあるためでもあります。陸水系から流れ込んでくる汚濁物質(つまり有機物)濃度の高い水は、時に富栄養化を起こすほど水中の微生物が増殖します。こうした微生物を餌にする多くの小動物が生活し、さらにそれらを食べる水鳥が集まるなど、多様な生命が育まれます。一方、高層湿原などの貧栄養条件によく適応した種もみられます。ミズゴケ類などは、水中の栄養塩類を効率よく吸収できる仕組みを持ち、貧栄養な湿原で優占しています。食虫植物は、虫などを捕食して、不足する栄養分を補っています。

こうしたウェットランドを世界の国々が協力して保全していこうと結んだ国際的な条約が、上にあげたラムサール条約です。締約国は、国内で少なくとも1ヶ所のウェットランドを登録し、国内の制度によって保全を図っていく義務が課せられています。

ウェットランドの現状は、世界各地で開発や環境汚染によって深刻な状況に曝されています。

水田は人工の湿地

日本国内でも、諫早湾の干拓事業に際して人々に強烈な印象を与えた「ギロチン問題」(堰の設置)や、藤前干潟の埋立断念などを契機に、干潟とその生態系に対する関心が高まっています。これらのウェットランドや釧路湿原等のラムサール条約登録湿地などが脚光を浴びるようになった反面、田んぼやため池や、水路など人間生活と深い関わりの中で維持されてきた水辺空間に対しては、十分な関心が向けられているとはいえないのが実情ではないでしょうか。

これらは農業生産のために創り上げられた人工的な環境ではあるものの、ウェットランドに対する関わりについて考える上では、こうした身の回りの水辺空間の意義も劣らずに重要であるといえます。

さまざまなウェットランドを利用して暮らしている水鳥

ラムサール条約の対象となるウェットランドは、河川から湖沼、湿原や干潟、さらに人工的な湿原まで、多様な水辺空間を一括りに捉えられています。水鳥をはじめ、多くの生物は、1年のうちで異なる環境のウェットランドを使い分けて生活していることが多いためです。すなわち、これら多くの種類の環境が全体として保全されることが、多くの生物の生息環境を守るには必要となります。

水鳥に関連した話題として、「(6−3)水鳥のくらし」もご参照ください。

ワラの文化

生活の隅々に、また精神世界にも深く浸透してきたワラの文化

ワラは、稲作農業の副産物だが、日本では古くから生活のさまざまな場面で広く活用されてきました。毎年確実に入手でき、また加工も容易な素材として、衣生活から食生活、住居のほか、農作業や運搬、流通 ・包装、また遊びや信仰など生活のさまざまな場面で利用されてきました。加工方法も、編んだり、撚ったり、結んだりしながら細工物に施すのをはじめとして、着火材として使ったり、燃えた後の灰も利用するなどワラの元の形状を残さない利用の仕方もありました。

こうしたワラの利用は、単に日用品としての「もの」が生活の隅々に浸透していただけでありません。地域ごとに特色のある神事や行事などが発展して、その中で注連縄や各種ワラ製神具などが重要な役割を担っていました。これらを通して、ワラの文化は日本人の精神世界にも深く浸透してきたといえます。

ワラの文化が消えてゆく

このように日本人の生活の中に身近にしみ込んできた「ワラの文化」が、稲作農業の変化にともなって消えつつあります。米の多収穫をめざした稲の品種改良が進められ、副産物であるワラの性状や材質も変化しています。また、コンバインによる収穫は、ワラを寸断することもあります。金属やプラスチック製品の発達と普及もワラ離れに拍車をかけたといえます。

今日の工業化社会を省みて、その限界や破綻を鑑みると、ワラの文化の持つ自然と人間の調和を見直し、学ぶべきことは多いといえます。

関連情報

食糧 ・農業 ・農村基本法

「農業基本法」が改正され、平成11年7月に「食糧・農村・農業基本法」が施行されました。これに基づき、平成12年3月に同基本計画が制定されています。

農林水産省大臣官房企画室
〒100-8095 東京都千代田区霞が関1-2-1
TEL: 03-3502-8111(代)
http://www.maff.go.jp/
田んぼの学校

「田んぼの学校」は、平成10年度の国土庁、文部省、農水省3省庁合同の「国土・環境保全に資する教育の効果を高めるためのモデル調査」において提唱されたものです。古くから農業の営みの中で形づくられてきた水田や水路、ため池などを、遊びと学びの場として活用し、農村の持つ多面的な機能を通して、環境に対する豊かな感性と見識を持つ人を養成することをねらいとしています。

「田んぼの学校」支援センター
〒108-0014 東京都港区芝4-16-4 ちくだんビル 社団法人 農村環境整備センター内
TEL:03-5484-4521
FAX:03-5485-4541
http://www.acres.or.jp/tanbo/top.html
「バケツ稲づくり」 −全国農業協同組合中央会(JA全中)バケツ稲づくりネットワーク

家庭にあるポリバケツを田んぼに見立てて、稲づくりを行う活動を推進、支援しています。一般には入手しにくい種もみ・肥料と、育て方を解説したマニュアル冊子、生育の様子を記録する観察ノートをセットにして、春先(2〜3月頃)希望者に送料実費で配布しています。なお、平成12年度で、通算11回目を数えるコンテストも併せて実施しており、種まきから収穫までの取り組みの様子を作品にまとめて、例年11月頃まで応募を受け付けています。

申込先:バケツ稲づくりコンテスト事務局
〒110-8722 台東区秋葉原2-3 日本農業新聞ビル 「バケツ稲づくりコンテスト」係
TEL: 03-5295-7453 FAX: 03-5259-7454 http://www.ja-group.or.jp/baketsuine/index.htm
※個人で申し込む場合は、氏名・年齢・電話番号を明記の上、160円切手を貼って住所を記入した返信用封筒を同封して封書で申し込んでください。2セット以上については、上記ホームページを確認もしくは事務局にお問い合わせください。


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