一般財団法人環境イノベーション情報機構
米国で進む「広域自律型マイクログリッド」
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【米国エネルギー革命2050シリーズ第10回】
◇本セミナーは、米国からのライブセミナーです◇
【講師】
クリーンエネルギー研究所 代表
阪口 幸雄(さかぐち ゆきお) 氏
【重点講義内容】
米国では1月20日にバイデン政権が誕生し、新政権の目玉政策であるクリーンエネルギーへの転換が始まった。これに伴い、2035年までの発電セクターにおける脱炭素化と、2050年のパリ協定遵守に向かって全セクターでの化石燃料使用の停止が本格化する。
バイデン政権のプランに関わらず、米国の電力業界は、集中型システムから分散型・双方向型のシステムへとシフトしつつあるが、インフラの老朽化、大規模自然災害の頻発、再生可能エネルギー発電の増加等が原因で、停電が起きやすくなっている。同時に、新しい技術、再生可能エネルギー統合にかかる価格の低下、規制の変化によって、エネルギー(電力)を作り、送り、配り、貯め、管理・共有し、使う選択肢と自由度が増えてきている。
これらの変革の最中にある米国の電力業界において、「エネルギーの地産地消」、「ビジネス中断リスクの低減」、「地域レジリエンシー強化」、「分散電源統合」、「社会インフラ再構築」に関わるソリューションの一つが「マイクログリッド」である。停電が起きた場合に電力グリッドから「分離」でき、サバイブできる機能が,マイクログリッドと他の分散型ソリューションの大きな違いであり原動力となっている。そのほか、エネルギーコストの安定、温室効果ガス排出量の削減、電力会社(配電事業者)から見て切り離しが容易といったメリットも大きい。
昨年7月に新社会システム総合研究所で行ったマイクログリッドの講演では、主に「単一需要家向けのコマーシャルマイクログリッド」を取り上げたが、今回取り上げる「広域自律型マイクログリッド」は、(1)フィーダー線をまたがり複数需要家をカバー(2)送電線リスクが高い遠隔地へのNon-Wired-Alternativeを実現(3)集合住宅でのレジリエンシーと経済性を実現(4)大規模な都市再開発の一環(5)スマートシティ実現への第一歩、等を目標にしており、近年米国で著しい進化を遂げている。
マイクログリッドコントロールシステムの進化、標準規格(IEEE2030.7/8)の制定、HIL(Hardware-In-the-Loop)を用いたテスト手法の進化、法規改正機運(カリフォルニア州のSB1339)、相変わらず多い自然災害と停電、等、今後10年で「コマーシャルマイクログリッド」と「広域自律型マイクログリッド」は車輪の両輪のように進むと考えられる。また、マイクログリッドは、技術革新や増える災害が後押ししているだけではなく、経済性の向上が大きな要因になっている。
近年日本でも「広域自律型マイクログリッド」が話題になることが多いが、先行する米国での例を参考に、どこにビジネスチャンスがあるのか、「第三者所有モデル」や「電力会社所有モデル」は成り立つのか等を多方面から解析し、日本はどう取り組むべきかを考える。
1.「広域自律型マイクログリッド」とは何か
(1)頻発する自然災害がマイクログリッド化を推進
(2)州政府や電力会社の関与
(3)法制の課題と整備(カリフォルニア州のSB1339で「Over-the-wall規制」の改革)
(4)第三者やCCA(Community Choice Aggregation)や電力会社所有モデル
2.広域マイクログリッドのコントローラとキーとなるデバイス
(1)三階層のコントローラの詳細と役割
(2)ディスパッチとトランジション
(3)進化・複雑化するコントローラの機能
(4) グリッドフォーミングインバータ
(5)ドループ制御
3.マイクログリッドの標準化規格
(1)コントローラの規格「IEEE2030.7」
(2)コントローラの検査規格「IEEE2030.8」
4.マイクログリッドの検査に用いられるHILテスト
(1)HIL(Hardware in the Loop)テストとは何か
(2)コントローラのテスト(C-HIL)
(3)電力系のテスト(P-HIL)
(4)実例
5.広域マイクログリッドの具体例
(1)シカゴブロンズビル広域マイクログリッド(イリノイ州)
(2)レッドウッド空港マイクログリッド(カリフォルニア州)
(3)サンタバーバラ地域マイクログリッド(カリフォルニア州)
(4)テスラの広域マイクログリッド向け提案(カリフォルニア州City of Fort Bragg)
6.広域マイクログリッドの経済性
7.日本のビジネスチャンスを考える
8.質疑応答
※プログラムは最新状況に応じて変更する場合があります
【登録日】2021.02.02