一般財団法人環境イノベーション情報機構
排出量取引制度(フェーズ2)の設計論議と企業活動への影響
ライブ配信/アーカイブ配信(2週間、何度でもご視聴可)
【講師】
京都大学大学院 経済学研究科 教授
内閣官房 GX実現に向けたカーボンプライシング専門WG
構成員
諸富 徹(もろとみ とおる) 氏
【重点講義内容】
2023年5月にGX推進法が可決され、2023年から排出量取引制度(GX-ETS)、そして2028年からは炭素賦課金が導入されることが決まった。これにより、日本でも本格的にカーボンプライシングが導入されることになった。とはいえ、このうち排出量取引制度は2023-25年が第1期として施行されているものの、参加・目標設定・順守の3点すべてにおいて義務づけのない自主参加型/任意の制度となっており、その実効性には疑問符が付けられている。
しかし政府は、第2期ではGX-ETSを抜本的に強化する方針である。そのため、25年中の法改正を目指してこの9月、内閣官房に「カーボン・プライシング専門WG」が設置され、GX-ETS第2期の制度設計論議が開始された。講師も委員として参画しており、本講演もそこで行われている議論を盛り込んだ内容としたい。
本講演では、カーボンプライシングに関して前提知識がなくても内容が理解できるように、カーボンプライシングの基礎知識や諸外国の動向、それらの評価といった話題から入ることにしたい。それを踏まえて、メインのテーマとしてGX-ETSを取り扱う。GX推進法におけるカーボンプライシングの位置づけを説明するとともに、GX-ETS第1期の特徴と問題点、そして現在進行形のGX-ETS第2期の制度設計論議の最新状況をお伝えしたい。
1.カーボンプライシングの基礎
(1)カーボンプライシングとは何か (2)その経済成長への影響 (3)脱炭素こそが経済成長を促す
(4)世界のカーボンプライシング (5)諸外国の事例:イギリスおよびドイツ
2.カーボンプライシングの制度設計
(1)炭素税 (2)排出量取引制度
3.GX推進法とカーボンプライシング
(1)GX推進法の意義 (2)米国のインフレ抑制法
(3)GX推進法におけるカーボンプライシングの設計をどう評価するか
4.GX-ETS第1期の設計とその課題
(1)GX-ETS第1期の概要とその特徴 (2)その問題点と改善の方向性
5.GX-ETS第2期〜専門WG
(1)GX-ETS改革の論点 (2)ヒアリングにおける主要な論点 (3)GX-ETSはどのように改革されるべきか
6.質疑応答
【講師プロフィール】
諸富 徹(もろとみ とおる) 氏
1998年 京都大学大学院経済学研究科博士課程修了、2010年3月より現職。2017年4月より京都大学大学院地球環境学堂教授を併任。環境経済学をベースに、カーボンプライシングや再生可能エネルギー政策、電力市場に関する研究を推進。
主著に、『環境税の理論と実際』(有斐閣、2000年)、『脱炭素社会と排出量取引』(日本評論社、共編著、2007年)、『低炭素経済への道』(岩波新書、共著、2010年)、『脱炭素社会とポリシーミックス』(日本評論社、共編著、2010年)、『入門 地域付加価値創造分析』(日本評論社、編著、2019年)、『入門 再生可能エネルギーと電力システム』(日本評論社、編著、2019年)、など。環境省中央環境審議会「カーボンプライシングの活用に関する小委員会」、内閣官房「カーボン・プライシング専門WG」など、国・自治体の政策形成にも多数参画。
【登録日】2024.09.12