一般財団法人環境イノベーション情報機構
令和元年度事例一覧
令和元年度は、全国の事業者による省エネ家電買換促進の取り組みを広げていくためのサポート策等について検討するため、全国9箇所において各都道府県電機商業組合の理事及び事務局を対象に、省エネ家電買換促進会議を開催して、地域における省エネ家電換促進策に向けた地域連携等を中心に、今後の推進方策に向けた事例やアイデアについて取りまとめました。
併せて、過去2年間の事業成果を踏まえて、地域に根差した電器店としての強みと特徴による省エネ家電買換促進の効果的な取り組みをより広く伝えるための取り組み事例について、読み物形式の記事として取りまとめましたので、紹介いたします。
省エネ家電の販売・買換え促進の効果と課題
意義・効果等
- 電気代削減&快適・健康な暮らしの実現
→顧客からの感謝や店への信頼性UP→他機種や他の部屋にも - 販売スタッフの温暖化に対する意識向上と、顧客への意識付けが進んだ
- 効率的・効果的な冷蔵技術の進化によって、廃棄食材の削減につながる点をアピール(冷蔵庫の場合)
- アンペア制限で設置できなかった古い団地等にも省エネ型エアコンは設置可能(エアコンの場合)
- メーカーの営業担当の意識変化:5つ星家電の発注に際して、メーカー担当者の認知度・理解度が向上
- 省エネ家電への買換えは、ゴールではなくスタート。
「ハード」の販売の先には「ソフト」(効果的な使い方の伝達等)、そして「サービス」(定期的なメンテナンスや故障・事故時等の対応を含む)がある。 - その積み重ねの結果として、「あんたの勧めるものなら」と納得してもらえる信頼感が築き上げられていく。
課題・要望等
- 機能を絞った手頃感のある省エネ製品で、 “喜ばれる普及”を
→【要望】高機能・高価格製品だけでな省エネ家電の普及に向けた国によるメーカーへの働きかけ等 - 5つ星への限定:まずは古い電気製品の買換え促進、そのうえでできれば5つ星を選んでもらうこと
- 買換えへの限定:新生活を始める人たちが新たに購入する家電の省エネ性能を上げていくことも大事
- カタログへの星表示:【要望】省エネ性能について意識してもらう絶好のタイミングと機会に伝えられないのはまさに機会ロス。消費者が適切な機種を選べるような制度改善をお願いしたい
- 販売後の処理:LED照明の交換などで、廃管処理の依頼が多く、負担が大きい。梱包材の処理も課題
→【要望】廃蛍光灯の回収システムの確立と、販売や回収に伴う処理負担の在り方についての整理 - 安価な家電製品等が、2~3回使っただけで廃棄されるケースも少なくない。安かろう悪かろうの商品の製造・販売に対する規制強化と、耐用年数の長い製品の開発・販売の推進につながるような法制化
- エコキュートとエネファームの推進に向けた取扱の制約に対する緩和が必要
- エアコンの違法な無料取外をする業者への規制の徹底
地域電器店が担う役割(事例とアイデアなど)
暮らしの困りごとを解決するための担い手に
- 業態の変化への対応 ~電器店から住まいや暮らしの困りごとを解決する担い手へ
高齢化する顧客は、高画質・高音質の大画面テレビなどを楽しむ一方、補聴器・歩行器・介護ベッドなど福祉・介護用品に対するニーズが高まっている現実 - 家電販売以外の困りごとへの『消極的対応』→『積極的対応』へ
顧客限定の対応(消極的対応)→地域のより広い層に対するサービスとしての事業化(積極的対応)
→家電販売だけでないところでの地域の中での役割が、これから地域電器店に求められ、期待される
家庭の省エネ/家丸ごとの省エネ対策
- 持ち家率・戸建て率の高い地域では、同じ家電を複数台所有する家も多く、集約等の働きかけが効果的
- リフォーム会社、設備会社との連携で家丸ごとの省エネ対策:太陽光や蓄電池の導入、断熱リフォーム、卒FIT後の蓄電池導入の提案など
- 次世代住宅ポイント:節水トイレの交換と合わせて、ポイント加算のため二重窓などプラスワンの受注
一方、ZEHの新築等では、屋根・壁・窓の断熱などで点数を満たし、家電製品は2つ星になるケースも
地域の見守り・防犯・被災相談など
- 地域の家庭を周っているケアマネジャーから家電の調子が悪いので見てほしいとの連絡が入った事例
→【アイデア】電商組として連携することで、面的広がりと継続的な取り組みへと発展させる - 地域の包括支援センターのチラシに、「家電の故障やランプ交換を踏み台に乗って作業する前に連絡してほしい」と案内している事例
→【アイデア】組織的な連携体制の構築を進めることで、面的な広がりへ - 防犯協会との連携で、特殊詐欺撲滅のための電話機設置の呼びかけを一部地域で推進
→【アイデア】振り込め詐欺や水道の詰まりにおける高額請求、台風被害による屋根瓦の改修など、地域の困りごとに対して訪問を含めたワンストップ相談窓口の設置に、地域店として協力 - 台風被害の際に、家電量販店から地域電器店に仕事の依頼が入ったケースもあり、地域のつながりを実感
地域の省エネ対策等
- 【アイデア】電力会社(新電力)との連携:省エネ家電製品購入による電気料金割引のパッケージ販売
- 【アイデア】卒FIT後の蓄電池導入による太陽光パネルの有効活用
→電気自動車メーカーやディーラーとの連携で共同キャンペーンを展開できると効果的 - 【要望】消費者の責務に対する教育の推進:地域を作るのは、販売事業者の責任も重要だが、消費者の責任も大きい。「地域は消費者が作る」という消費者教育の充実が必要
- 【要望】たばこ税による税収を「たばこは市内で買いましょう」と市町村がPRするように、地域内の資金循環の実現には、行政の施策や法整備が必要
- 地域の連携対象は、団体等に目を向けるより、地域住民の自主的な取り組みに関与していくことが大事
そのためのスキームをしっかりと組み立てていくことが重要
行政や地域センターとの連携の事例と提案
啓発資料等
- 5つ星家電のわかりやすい啓発資料の作成、提供
→地域電器店では省エネに関する啓発資料(チラシ類など)の作成が課題。一方、行政や地域センターでは啓発資料等のPRと活用が課題
→メーカーや販売店発信の普及啓発資料等では、商売と見られがちのため、行政や地域センターなど公的機関の協力で客観的な働きかけとしてPR
→地域センター事業として(次年度)予算をとって、地域版の5つ星家電パンフレットの制作を企画。
地域の実情に合った使い方のアドバイスなどを地域電器店の協力によって盛り込んでいくことで、具体的提案に結び付ける - アプリやQRコードを活用した、省エネ家電の購入・買換えによるポイント制度等と、電機商業組合が組合員向けに開催しているIT講習会などとの連携で活用をPR
人的資源、ネットワークの活用
- 地球温暖化防止活動推進員と地域電器店との連携で、10年以上使っている古い家電製品の掘り起こし
- うちエコ診断の新たな受診者の紹介・拡充
→家庭の省エネ推進にはうちエコ診断が効果的だが、地域センターのネットワークによる受診は飽和状態にあり、受診者掘り起こしが課題。
電機商業組合や地域電器店との連携で、受診者の拡大へ - 県の委託事業として実施している小学校等へ出前授業で、小学校区の地域電器店による話題提供等の依頼。マンネリ化してきている出前授業のリフレッシュ効果も期待
- 地域センター同士の全国ネットワークを通じて、各地の実施状況等情報を電機商業組合とも共有・活用
- 省エネ家電買換えを中心とした地球温暖化対策について、地域電器店等に対する研修機会の提供
→温暖化の最新情報や行政の事業等の紹介の他、断熱等の住宅設備に関する研修事例もある
→省エネ家電の購入者となる一般市民向け講演会等を地域で開催することで、省エネ家電買換えの必要性や効果についてアピールすることにつながるとして、地域電器店・地域センターの連携・協働による企画の実施事例などもある
イベント・会合等での協力
- 産業フェアなどのイベントで、啓発ツール(自転車発電や、LEDと白熱球の消費電力の比較装置)を活用してエネルギーの大切さや消費電力の違いなどを体感してもらい、電器店の話につなげる
- イベント自体のエコ化として、エネルギー削減や使い捨てプラスチック対策などPR、経費削減効果も
- 販売店・メーカー等の会合に地域センターを呼んで、新たな視点からの取組内容や発想を期待
県事業での連携・協力
- 県事業の家庭のCO2削減:『普及啓発』(家電の使い方等)
→次のステップ『省エネ家電買換え行動』へと舵を切るに当たって、電機商業組合との連携・協力による進展を期待
古い家電の掘り起こしと、省エネ家電買換え促進の事例
①名古屋市「古い冷蔵庫を探せコンテスト」のケース
- COOL CHOICE地域連携事業の一環として実施(景品は企業協賛)
応募総数:509件(過去の類似事業の中でも最古のビンテージ冷蔵庫(1961年製)がグランプリ)
②新潟県「Let's 省エネ!家電買換キャンペーン」のケース(「普及啓発」→「行動」へ)
- 平成27年度から令和元年度で第5回となる省エネ家電買換えキャンペーン
- 対象製品は、エアコン、冷蔵庫、LED照明(平成30年度の第4回から液晶テレビ、電気便座も追加)
- 毎年、各製品で数百件の買換え実績をあげている
- 平成30年度の第4回からレトロ家電コンテスト導入
- 8割が電機商業組合の組合店からの販売であり、地域に根差した地域電器店との連携が、掘り起こしや買換え行動促進に効果を生んでいる
③「古い家電コンテスト」事業は、
- 平成27年8月に鳥取県北栄町
- 平成27年12月と28年8月に飯田市のNPO
- 平成28年・29年にならコープ
- 平成29年度に九都県市及び柏市、宝塚市
などでも実施している
今後の省エネ家電買換え促進の進展に向けて
背景
○3年間のマーケットモデル事業を通じた温暖化に対する危機意識の高まりを受けて、電機商業組合や地域電器店の意識が変化するとともに、地域社会との関わりの変化も生じてきている。
①地域電器店による省エネ家電買換え促進の草の根運動への展開に向けた底上げ
- 地域電器店の中でも先駆的取組をするところと環境意識があがっていないところがあり、全体の底上げを図っていくためには各電機商業組合による組合員への働きかけが重要となる。
- 組合員全体の底上げと全国的な草の根運動の展開には、青年部を中心とした将来を担う世代とともに実践に向けた議論の場を作って、具体的な一歩として進めていくことが必要
②地域センターとの関係構築
- 地域センターの存在を初めて知った(認知した)、またかねてより電機商業組合への働きかけてきたがよい感触が得られなかった地域では、今回、全国電機商業組合連合会からの協力要請を受けた環境省の会議の席で、アドバイザーとして出席する地域センターの取り組み内容や役割などを知り、また見方を変えるきっかけとなって、前向きな協力・連携に向けた話のできる土台ができた
- 過去に連携事業等を実施してきたが、その後の事業連携がない、もしくは個別店舗との関係性にとどまる地域では、関係のリフレッシュや組織間の関係・連携へと発展・強化する契機となった
- 現在進行形で事業を進めている地域では、その先駆性を再認識することで、さらなる発展も期待できる
- 総じて、双方にとって一定の効果を生んだ(生むことが期待できる)という意見・感想が多く出された
③業界全体での議論の必要性
- 温暖化対策の推進のためには、業界全体による会合が必要との意見・指摘
家電販売業全体の10%に満たない電機商業組合の参加だけでは大きな輪にはならない。
量販店やネット販売を含む家電販売業全体のコミュニケーションが必要。
さらに電器製品を扱う異業種(住宅メーカーリフォーム会社、ガス会社、ホームセンターなど)も含めた対策の検討をしていかないと大きな進展は望めない。