作成日 | 2026.07.23 更新日 | 2026.07.27
適応ギャップ報告書
テキオウギャップホウコクショ 【英】Adaptation Gap Report [略]AGP
解説
UNEP(国連環境計画)が発行する「適応ギャップ報告書(AGR)」は、パリ協定採択の前年である2014年から毎年公表されてきた。先行して発行されていた「排出ギャップ報告書(EGR)」と一対をなす形で、パリ協定の交渉における科学的基盤を提供することを主目的としている。2015年のパリ協定発効以降は、同協定が掲げる「適応に関する世界全体の目標」の達成に向けた進捗を評価する役割を担っている。
本報告書は、気候変動への「計画」「資金」「実施」という3つの側面から世界の進捗を分析し、特に途上国における「適応ニーズ」と「現実の取り組み」の間に存在する深刻な格差(適応ギャップ)を浮き彫りにしてきた。
AGRは、UNEPコペンハーゲン気候センター(UNEP-CCC)を中核に、世界の専門家ネットワークと密接に連携して作成される。執筆には世界中から約100名の第一線の専門家が参加し、厳格な外部査読を経て完成する。なお、適応問題が途上国でより切実なため、執筆者の約半数を途上国出身者が占めるよう調整されている。
IPCC評価報告書やパリ協定のグローバル・ストックテイク(GST)が数年周期の包括的評価であるのに対し、AGRは毎年更新される「リアルタイムの評価」として、国際交渉や政策形成に不可欠な役割を果たしている。
本報告書は、現状のギャップを指摘するだけでなく、特定の重要テーマを深掘りする「第2部」を設けている点も特徴である。2020年には「適応」「緩和」「生物多様性」の3課題に同時に対処する「自然に根ざした解決策」を提唱し、ネイチャーポジティブへの転換を強く打ち出した。
その影響は極めて大きく、2021年のCOP26では「適応資金を2025年までに倍増させる」というグラスゴー合意の策定を力強く後押しした。さらに2022年のCOP27では、懸案であった「損失と被害」基金の設立に向けた歴史的な合意形成においても、重要な科学的根拠を提供した。(2026年5月作成)
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関連Webサイト
- Adaptation Gap Report(UNEP/国連環境計画):https://www.unep.org/resources/adaptation-gap-report
- ADAPTION GAP REPORTS(UNEP Copenhagen Climate Centre/国連環境計画コペンハーゲン気候センター):https://unepccc.org/adaptation-gap-reports/
- 適応ギャップ報告書2024(エグゼクティブ・サマリー):いかなる困難も乗り越えて 貧困層が最も深刻な影響を受ける今、世界が適応行動を強化すべき時(日本語翻訳版)(地球環境戦略研究):https://www.iges.or.jp/jp/pub/unep-agr-2024/ja