GMPによると、ヨセミテバレーの施設エリア(developed area)の宿泊収容レベルは、キャンプ場及び宿泊施設の規模から算定して7,771人、日帰り利用(Visitor Use)レベルは、日帰り利用客の利用可能な駐車場容量及び、計画策定当時ツアーバスで入場していた日帰り利用者数に基づき、10,530人とされている。
計画では、バレー内の駐車場の数を大幅に削減し、盆地外の駐車場からバスによる輸送を打ち出している。パークアンドライドだ。それにより、自家用車の乗り入れによる悪影響を低減し、最終的には私用車をヨセミテバレー内から締め出すとしている。こういった施設の削減により、ビジター利用レベルを一定範囲に抑えようとしている。利用者が集中した場合には、入場制限も可能としているが、今のところほとんど入場が規制されたことはないらしい。
ヨセミテバレー地区には、GMPとは別に「ヨセミテバレープラン」という大部の計画がある【14】。2000年に策定され、計画に基づいて、バレー内の利用拠点の再整備などが進められている。
この計画の特徴は次の通りである。
・250以上の具体的な事業、対策
・大面積の草地、樹林地の再生
・日帰り利用客のための駐車場収容台数の拡大(550台)
・ヨセミテロッジの改築
・Northside Driveの車両通行の禁止と多目的トレイル化
・特定の区間についてシャトルバスの増発
プランでは、GMPの打ち出した「自家用車のバレーからの締め出し」とは逆に、駐車場の増設計画が盛り込まれている。理由を簡単にまとめると、「GMPでのバレーの総収容人数は1日10,530人であるが、1980年に比べて宿泊容量が減ったために、その分日帰り施設を増やすことができる」としている。見方によっては相当に無理のあるこじつけだ。国立公園局がこのような無理を押し通す背景には、ヨセミテバレー地区の利用者数の急増がある。ヨセミテバレープランによれば、1980年のGMP策定当時から2000年にかけて倍増している【15】。
その上、日帰り利用者の約86%は、依然として自家用車を運転してバレーを訪れている。典型的な混雑日には、バレー東側を訪れるビジターの27%が、路肩や日帰り利用客用以外の駐車場に車を停めるか、駐車スペースを探して走り回ることがわかっている。こうした混雑日におけるバレー内の延べ走行距離は、概算で69,014マイル(約11万キロメートル)と試算されている。
こうした実態を受けて、バレー内の渋滞が激しくなるハイシーズンには、日帰り利用者用駐車場の利用と、無料の巡回バスや自転車、徒歩での移動をするよう誘導しており、日帰り駐車場増設の必然性が説明されている。結論はどうあれ、政策決定の裏付けデータがしっかりと計画書に書き込まれていることはすばらしいことだと思う。