アラスカの石油パイプラインは、フェアバンクスの近くで実物を見ることができます。大きな駐車場があって、大型バスが並ぶ観光地です。パイプラインは、近くで見るととても大きなものです。直径1m弱のパイプが、延々と続いています。アラスカの大自然の風景とかなりミスマッチで、初めて見たときはかなりの違和感を感じました。 パイプラインの全長は800マイルあって、途中何箇所かのポンプ場が設置されています。このパイプラインがアラスカの北の端のプルードーベイから南のアラスカ湾にあるバルディーズまで縦断しているのです。1973年に建設が許可され、1977年に完成しています。総事業費は80億ドル(建設当時)。採掘された石油は最低30年間は生産が可能だそうです。ただ、もう30年間経ってしまっていますので、石油がなくなったときに、このパイプラインはどうなるのか少し心配になります。 このパイプラインには、いろいろおもしろい仕掛けや工夫があります。まず、パイプラインは土の中に埋められるのではなく、地上に出ています。これは、パイプラインの中を流れる原油が高温なので、地中に埋めてしまうと永久凍土が融けてしまうためだそうです。どうしても地中に埋めなければならない部分は、冷却水で周りを冷やします。 2本の支柱の上には、アンテナのようなものがついています。これは、放熱のための冷却フィンで、支柱から熱が土中に逃げるのを防いでいるものです。このパイプラインを支える支柱はかなり丈夫で、地上3m程度のところまでパイプを押し上げています。これは、カリブーなどの群れがパイプラインの下を自由に行き来できるように配慮されたものだそうです。また、パイプは横木の上に載っていますが、固定されてはいません。アラスカは地震が多いので、固定しない方がパイプが傷まないそうです。パイプにはいろいろ工夫があって驚きましたが、カリブーなどの野生生物にとっては、やはり大きなストレスになっているのではないでしょうか。
記事・写真:鈴木渉(→プロフィール)