これは、米国国立公園における施設の2大類型ともいえる施設タイプの好例といえる。
ビジターセンターは、アメリカの国立公園の一大公共事業ブームであった「ミッション66」の時期に建設された
【8】。これらの多くはRC造で、規模も大きい。建て替えの際には大量の廃棄物が排出されるだろう。
これに対し、戦前にCCCによって建設された公園施設は、木材や石材が用いられ、人力により建設された。これらの木造建築物は、維持修繕の手間や費用はばかにならないものの、エネルギー消費や取り壊し時の廃材が少なく、RC構造に比べて改修も容易だ。その上、建物自体が歴史的な展示物としても機能している。
国立公園局は、このような古い施設を「アダプティブ・ユース(adaptive use)」として、積極的に利用している。また、建築物が平屋(一層構造)であることも有利だ。エレベーターや階段が必要ないために、施設が広く使え、またバリアフリー化も容易だ。さらに、照明機器が簡易で、かつ位置も低いため、電球の付け替えや掃除などが楽だという利点もある。気象条件が厳しく、維持管理コストのかさむ山岳地帯における施設は、こうした点も考慮すべきだろう。
おもしろいのは、同じ国立公園内に、このような2つのタイプの施設が共存していることだ。ビジターセンターのような大規模施設では、山岳地帯の懐でも、ゆっくりと展示を見て回り、買い物したり食事をしたりすることができる。一方で、登山客やハイカーにとっては、石積みと木造の施設により、伝統的な国立公園らしい雰囲気を味わうことができる。新しく快適な建物を造りながら古い施設も大切に使う姿勢は、とても新鮮に映る。
特に、マウントレーニエには、木造の歴史的な施設が多いような印象を受けた。アメリカの国立公園というと、大規模な施設が頭に浮かぶが、こうした古い建物を大切に使うということも、学ばなければならないように思える。
|
写真26:ロングマイアにある木造のミニビジターセンター
|
|
|
|
写真27:同じくロングマイアにある古い木造の事務所 |
|
(「妻の一言」はお休みさせていただきます)