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No. アメリカ横断ボランティア紀行(第17話) オレゴン州、ワシントン州遠征
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Issued: 2008.06.19
オレゴン州、ワシントン州遠征[2]
 目次
ニスクアリーNWRの管理体制
職員の待遇
ニスクアリー国立野生生物保護区の管理方針
保護区の管理業務
ニスクアリーNWRの管理体制
 保護区の職員は9名の常勤正規職員(permanent staff)、2名の常勤臨時職員(temporary full time staff)、その他契約職員(contract staff)1名の合計12名だ【3】。  「その他に、国レベルの奨学金制度であるAmericorpの奨学生として、学生の研修生が5名派遣されています。学生に経験の機会を提供すると同時に、保護区管理コストの低減にも役立っています」

 保護区で活動するボランティアは約100名。パークレンジャーがトレーニングプログラムを実施し、受講者のリストを作成する。このリストに基づき、協力が必要な際に個別にメンバーに打診するそうだ。ほとんどのボランティアは退職した高齢者からなり、その貢献を保護区全体の職員の業務量に換算すると、全体の6〜7%にも相当するそうだ。

 「問題は、研修生やボランティア用の宿舎です。保護区内には宿泊できる施設がありません。リタイア組の多くは、キャンピングカーで移動してきますからそれほど問題にはなりませんが、地元出身でない学生は、民間の借家を共同で借りたりしています。こうしたボランティアの滞在先の確保が課題となっています」
【3】 ニクスアリーNWRの職員内訳
 常勤職員9名の内訳は、所長1名、副所長1名、所長補佐1名、事務系職員2名、メンテナンス2名、アウトドアレクリエーション1名、レンジャー1名である。なお、職員は全員が野生生物学の学位をもっている。
職員の待遇
 「魚類野生生物局は組織が比較的小さいので、1つの保護区に長くとどまるより、いろいろな保護区をまわって経験を積むことが奨励されていました。そのため、以前は3〜4年ごとに異動していました」
 近年は、パブリックインボルブメントなどの手続きが複雑化していることもあって、職員が3年程度で異動していたのでは仕事が立ち行かなくなってきた。最近では、むしろ1ヵ所に4年以上勤務するのが一般的で、中には10〜15年勤務している職員もいるそうだ。国立公園局に比べて、単位保護区面積当たりの予算や職員数が少ないため、ひとつの仕事に複数の職員が関わることが難しいという事情もある。

 なお、この保護区には法執行官としての資格【4】を持つレンジャーがいないため、逮捕など法律を執行する必要がある際には、地元の警察官に依頼している。  通常、国立公園などの連邦政府管理地は連邦政府組織により一元的に管理されるため、地方自治体にとってみれば一種の治外法権地帯である【5】。職員が少ない野生生物局では、あらかじめ地域の警察官と合意書を交わし、連邦政府内での活動を可能としているそうだ。
【4】 法執行官
 法執行官(law enforcement officer)としての資格を得るためには、ジョージア州にある連邦政府の研修センターにおいて6ヶ月間の研修を受講する必要がある。
【5】 連邦政府管理地の“治外法権”
 連邦政府所管は、それぞれの土地の管理者によって排他的に管轄(exclusive jurisdiction)されている。
ニスクアリー国立野生生物保護区の管理方針
 「野生生物保護区の管理方針は、保護区ごとに定められる包括保全計画(Comprehensive Conservation Plan:CCP)に定められています」
 このCCPは国立公園局のGMP(General Management Plan:総合管理計画)に相当するもので、15年ごとに見直しが行われる。
 「この保護区のCCPは、策定に7年間を要しました。パブリックコメントなどに大変時間や手間がかかったためです」
 パブリックインボルブメントの手続きは、通常でも3〜4年間は必要だと言われている。保護区における計画策定の手続きは、地域事務所計画部門の支援を受けながら、主に保護区事務所が行う。
 ニスクアリーのCCP作成に時間を要したのは、土地所有や一般の利用と野生生物の保護のバランスなどの課題を抱えているためだ。
保護区の管理業務
写真12:ビジターセンターの物販コーナー

 「外来種問題は深刻で、毎年春には2〜2ヵ月半に相当する時間を、移入種対策のために費やしています。これは、保護区の統合的加害生物管理計画(Integrated pest management plan)に基づいて実施します」
 また、毎年4,000〜5,000個体のカナダガン(Canada Geese)が訪れるなど、多くの渡り鳥に生息地を提供するような管理を行っているということだ。保護区の開拓地跡にある湿原は、簡単な水門を設けて、季節によって水位調整を行っている。また、草地を構成する植物の種類を調整するために、耕耘なども行う。
 「草地は牧草に覆われているので、牧草を刈り取り、ムギなど渡り鳥が食べられるような植物を播種したりしています」
 冬期は雪で閉ざされることの多いこの地域では、ニスクアリーのように1年を通して管理が必要な保護区は珍しい。利用者も多いことから、ここの職員は多忙なようだ。
 保護区の管理は、ボランティアに加え、フレンズグループ(Friends of Nisqually National Wildlife Refuge)といわれるNPOが支援を行っている【6】。この団体は、ビジターセンターで物販を行い、売上の一部を現金や図書などの形で保護区に還元する。この寄付は、職員用の図書、ボランティアの表彰、イベントなどに使用されている。
【6】 保護区管理とフレンズグループ
・第6話 遠征編 from Mammoth Cave
「グレートスモーキーマウンテンズ国立公園における自然資源管理」
・第15話 国立公園局と州政府の協力
「寄付の取り扱い」
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