フェアバンクスには、周辺の野生生物保護区の管理事務所がいくつかある。それも、同じ建物に入っている。日本でいうと合同庁舎のような建物だろうか。その日は、ユーコン・フラット国立野生生物保護区の管理事務所を訪ずれた。
建物に入ると、ロビー正面に、ブッシュ大統領とチェイニー副大統領(当時)の写真が飾ってある。もう一枚は内務長官のものだろうか。戦前の日本か、途上国の政府機関にでも来ているようだ。
野生生物保護区の事務所に到着すると、さっそく会議室に通される。対応してくれたのは、所長のテッドさん、副所長のバリーさん、そして生物学者のダリアさんの3人だ。これまで何度かインタビューをしてきたが、これだけ厚遇されたのは初めてだった。
所長のテッドさんは、いかにも現場経験者らしい温厚そうな方だ。
「ユーコン・フラットは、アラスカの中ほどを流れるユーコン川の上流部に広がる野生生物保護区です。保護区は、渡り鳥の重要な繁殖地である低湿地とともに、山地などの多様な地域を含んでいます」
保護区の面積は1,100万エーカー(約445万ヘクタール)だが、連邦政府の所有地は860万エーカー(約350万ヘクタール)しかない。
「残りの土地は原住民の所有です。区域内には1,200人ほどの原住民が居住しています。区域内の居住地のうち、渡り鳥の生息地として重要なウェットランドについては、保護区内の山地との交換について土地所有者と交渉を行っています」
職員は常勤職員が13〜14名、臨時職員(seasonal)が6名程度。事務所には、航空機が2機(プロペラ4人乗り、6人乗り)あるそうだ。
「パイロットの資格を持つ職員が2名勤務しています。1名が生物学者(biologist)、もう1名が取締官(law enforcement)を兼任しています。事務所はフェアバンクスにあるため、現地管理業務のためには飛行機が不可欠なのです。飛行機で移動し、現地でキャンプしながら管理業務を行っています」
過酷そうだがなんともうらやましい話だ。
「保護区の職員には、この他に火災管理官(fire management)、原住民狩猟採集活動コーディネーター(subsistence coordinator)、地理情報システムGIS技術者、環境教育担当官などが配置されています」
ところが、教育や広報などの業務は緊急性が低いため、ポストの優先順位はどうしても低くなってしまうという。兼任ポストがどうしても多くなる。
「中には、他の野生生物保護区事務所との兼任ポストもあるのです」
同じ建物には、翌日インタビューを予定している北極国立野生生物保護区とカヌティ(Kanuti)国立野生生物保護区の事務所もある。
「魚類野生生物局は予算が少ないので、予算の範囲内で重要なポストから職員を埋めていきます【1】」