1990年代、米国の国立公園は深刻な経費不足に見舞われた。歩道や標識は荒廃し、歴史的建築物は補修の遅れが目立つようになった。このため米国議会は、1996年度の内務省予算法(FY1996 Interior Appropriations Act)の中で、フィー・プログラムを承認し、これに対応しようとした。
フィー・プログラムは、これまで国庫に納付していた国立公園の入園料や有料プログラムの徴収料金を、そのまま各部局の独自財源とすることができるという意味で画期的な制度だった。国立公園局では徴収料金の80%を、料金が徴収された各国立公園の予算として使用することができる。
フィー・プログラムが導入される以前は、一部の特別な料金収入を除いて、国立公園における料金収入は土地及び水保全基金に納付され、レクリエーション目的で公園の区域内または隣接する区域、もしくは新規公園設立予定地において用地を買収するための資金として使用されていた。これは、1965年に制定された土地及び水保全基金法(Land and Water Conservation Fund Act: AWCF)に基づく制度だった。また、料金徴収額にも上限が設けられていた【3】。
フィー・プログラムの導入により、料金上限規定が撤廃され、これらの収入の使途はビジターサービスに関係する臨時職員の給与や施設の更新に拡充された。また、基金を経由せず、直接公園予算として使用できるようになった。
一方、このプログラムの導入により、料金上限撤廃と値上げによる運営費用増額のインセンティブが働いた結果、入場料金が大幅に値上げされた。その結果、訪問者は経済的に余裕のある層が多くを占めることとなり、裕福な利用者に偏重した公園管理を招いているのではないかとの懸念が生じている。また、この予算は議会の承認を要しないため、国民の監視が行き届かないおそれもある【4】。
予算の使途が、依然、ビジターサービスに関連する施設の更新にしか使用できないなど制約はあるものの、予算不足で施設の補修・改修ができずにいた国立公園が多かったため、同制度の導入は公園施設の老朽化が進む各国立公園で歓迎され、施設の改善が進んだ。なお、国立公園局の2007年度予算書【2】によれば、この制度は、2005年度予算関係の一括法(FY 2005 Omnibus Appropriations bill)により拡充され、継続されることになった【5】。
フィー・プログラムについての説明看板。利用者向けに入場料金が有効に活用されていることをアピールしている(マンモスケイブ国立公園) |