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生物多様性版スターンレビュー 気候変動と生物多様性の関わりについて報告

自然環境 生物多様性】 【掲載日】2009.09.14 【情報源】国連/2009.09.02 発表

 森林やマングローブの林、湿原や河川など、世界の生態系の維持・修復に投資することは、気候変動に対応し、気候変動に強い経済を構築する上で重要な役割を果たす とする報告が発表された。これは、生物多様性の喪失について、経済学的な観点から地球規模の研究を進めている「生態系生物多様性の経済学(TEEB)」プロジェクトによるもので、特に気候変動に焦点を当てている。TEEBはドイツと欧州委員会によって打ち出されたプロジェクトで、現在は国連環境計画(UNEP)が事務局を担当している。
 今回の報告では、12月の第15回気候変動枠組条約締約国会議(COP15)において、森林への資金提供に関する合意が重点になると強調。森林は、世界のCO2排出量の15%に相当する、推計5ギガトンのCO2を毎年、吸収しており、自然界の「緩和策の原動力」となっている。森林減少・森林劣化による排出削減(REDD)など生態系に関する対策への投資は、気候変動対策にとどまらず、貧困撲滅や気候変動への適応策ともなる。TEEBでは、森林への資金提供に関するパッケージに、森林の有する様々なメリット(水源涵養、土壌の安定化、農業への栄養分の供給等)を組み込んでいくよう各国政府に求めている。
 なお、CO2固定、気候変動への適応といった生態系サービスを維持・強化するために必要な投資の規模は正確には分からないが、TEEBでは、生態系インフラへの投資はかなりのリターンが得られる可能性があるとしており、例えば、保護地域に450億ドルを投資するだけで、年間5兆ドル規模の生態系サービスを確保することができるという。
 また、COP15で各国政府が対応を強化せず、野心的な合意に失敗した場合の結末についても取り上げ、特に、「サンゴ礁の危機」について強調。TEEBでは、大気中のCO2濃度が350ppmを超えると、水温の上昇や海水の酸性化により、取り戻すことのできないよう被害がサンゴ礁に生じるとしているが、既にこのレベルは超えてしまっている。TEEBプロジェクトのリーダーを務めるドイツ銀行のスクデフ氏は、サンゴ礁の生み出す生態系サービス(海岸浸食の防止、魚類の育成等)は、年間1700億ドルに上り、5億人の人々が依存していると指摘。CO2濃度を450ppmで安定化させることになると、数十年以内にサンゴ礁が絶滅し、こうした人々の生活が脅かされるという。
 多くの国々が目標としている450ppmでの安定化について、スクデフ氏は、ある種の生態系生物多様性には十分かもしれないが、サンゴ礁の存続にとっては疑問だとしている。【UNEP】【ドイツ連邦環境省】


プレスリリース:UNEPプレスリリース

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