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イベント情報PM2.5の健康影響

PM2.5の健康影響

【カテゴリ】 大気環境 大気汚染

【開催日】2022.02.16

【開催地】全国


IIAE令和4年特別セミナー 第2回
テーマ:PM2.5の健康影響
時間:14:00-16:00 オンライン開催

講師(敬称略):
島 正之(兵庫医科大学)『PM2.5の健康影響に関する疫学研究』
 微小粒子状物質(PM2.5)は、呼吸器系、循環器系をはじめとする様々な健康影響を生じることが知られている。わが国では2009年に環境基準が設定され、達成率は大きく改善している。一方、昨年9月に世界保健機関はPM2.5のガイドライン値として、「1年平均値は5μg/m3以下、24時間平均値は15μg/m3以下」が望ましいと勧告しており、わが国の環境基準より相当低い濃度でも健康影響が生じる可能性を示している。また、PM2.5は大気中での二次生成粒子の占める割合が大きく、発生源が多様であるため、その構成成分と健康影響との関連を評価することも重要である。
 我々は、兵庫県姫路市においてPM2.5をはじめとする大気汚染が気管支喘息に及ぼす短期的な影響について長年にわたって疫学研究を行っている。また、瀬戸内海のほぼ中央に位置する愛媛県弓削島においてPM2.5の成分濃度の測定を行い、島内の学校に通う学生の肺機能との関連について検討を行った。これらの成果を踏まえて、PM2.5が主に呼吸器系に及ぼす影響についてお話ししたい。


奥田知明(慶應義塾大学)『PM2.5の採取・分析と環境動態−サイクロンによる新たなアプローチ−』
PM2.5に代表される微小な粒子状物質の有害性は、粒子が有する様々な特性に依存するため、その特性の相違に着目した健康影響評価研究の推進は喫緊の課題である。特に、気管支喘息を代表とする呼吸器系や免疫系に対する粒子状物質のリスクに係る信頼性の高い科学的知見の蓄積が求められている。粒子試料採取のために従来用いられてきたフィルター捕集は、化学成分分析には適しているものの、細胞や動物曝露による毒性学的実験のためには、フィルターから必要量の粒子が取り出せない等の多くの問題があった。そこで演者は、フィルターを用いずに粒子状物質の採取を可能とするサイクロン装置を独自に開発し、粒子状物質の毒性学的知見の蓄積に貢献してきた。本講演では、装置開発から粒子の有害性評価へと進展してきた研究の経緯と現状について、特にサイクロン装置の性能評価に焦点をあててご紹介する。


高野裕久(京都大学)『PM2.5の実験的(毒性学的)研究に関する最近の知見』
近年、国内外由来の2.5 μm以下の微小粒子状物質(PM2.5)の健康影響が注目されている。統計学的に、PM2.5の上昇と相関する健康影響として、発癌、全死亡率、呼吸器系や循環器系の疾患による死亡率、それらの疾患の悪化、中でも、気管支炎や気管支喘息の悪化、アレルギーに関わる疾患や症状の悪化等が挙げられている。また、PM2.5による死亡率および有症率の増加や症状悪化を理論づける病態生理学的メカニズムに関しても、多くの仮説と実験(毒性学)的知見が提唱され、これらをまとめ、理解する試みも進展してきている。例えば、呼吸器系にPM2.5が影響をもたらす想定メカニズムとして、以下が挙げられている。

呼吸器系について
1)気道や肺に炎症反応を誘導し、より高濃度な曝露の場合、肺障害が発現する。
2)気道の抗原反応性を増強し、喘息やアレルギー性鼻炎を悪化させる。
3)呼吸器感染の感受性を増加する。

一方、PM2.5の構成成分は多様であり、移送時の二次生成・変化も存在するため、健康影響の発現や悪化に寄与する主な成分や要因は明らかにされていない。PM2.5の健康影響を決定する成分や要因を特定するために、最終的には、実際の成分測定を担う大気観測研究とともに、当該成分や要因と健康影響の相関性を検証する疫学的研究が必要となる。しかし、膨大な構成成分よりなり、二次生成・変化を受けるPM2.5のいかなる要素に注目すべきかを明らかにするためには、実験(毒性学)的アプローチを先行させることが不可欠である。換言すれば、病態生理学的メカニズムに立脚したPM2.5成分・要因の影響評価研究を進め、健康影響を決定する真の要因や化学成分を同定し、健康影響をエンドポイントとするPM2.5成分モニタリング対象候補物質(群)の特定につなげることが、極めて重要である。
 
 我々は、気管支喘息の悪化に寄与する主なPM2.5成分や要因を明らかにするため、動物実験とともに、大気環境汚染物質と呼吸器系との最初の物理化学的接点である気道上皮細胞やアレルギー・アトピー成立に関わる抗原提示及び免疫応答を担う免疫担当細胞など、様々な細胞を用いた実験研究的アプローチを進めてきた。当初はフィルター抽出物を対象とし研究を進めたが、フィルターからの抽出物を用いた従来の研究では、PM2.5に含まれる‘抽出可能’な成分の影響を評価することは可能であるものの、不溶性の粒子を含むPM2.5そのもの(全体)の影響を評価することはできない!という致命的な問題を残していた。また、大気中に存在するPM2.5中の成分を、あるがままの化学形態で評価ができているのかも不明であった。その後、「新規採取法及び細胞・動物曝露実験によるPM2.5の健康影響決定要因の同定−環境省推進費CYCLEXプロジェクト」において、曝露実験による健康影響評価に十分な量のPM2.5の確保と、実環境大気中の化学性状を保持したPM2.5の採取を可能とする新規技術を確立し、PM2.5粒子全体を用いて影響評価を実行し、健康影響を決定する真の要因や化学成分を同定することをめざした。
本講演では、これまでの我々の研究や「新規採取法及び細胞・動物曝露実験によるPM2.5の健康影響決定要因の同定−環境省推進費CYCLEXプロジェクト」の成果を中心に、PM2.5の実験的(毒性学的)研究に関する最近の知見について口述する。


申し込みは下記URLへアクセスしてください。
https://iiae.or.jp/seminarlist/special_seminar/

【登録日】2021.12.28

登録者情報

【登録日】 2021.12.28

【登録者】一般財団法人大気環境総合センター

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