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環境Q&A

ダイオキシン類の分析設備について 

登録日: 2004年01月29日 最終回答日:2004年02月04日 健康・化学物質 その他(健康・化学物質)

No.4837 2004-01-29 11:41:24 ohno

初めて投稿します。よろしくお願いします。
 現在、業務でダストや排ガス中のダイオキシン、PCB類を定性、定量する必要があり社外の試験機関に外注しています。今後、社内でも分析を行えるようにするために、分析方法や必要な設備などについて勉強中です。
 分析装置メーカに相談したところ前処理はケミカルハザード室を設置しその中で行うこと、設置には4,000万円程度かかり、維持費も年間数百万円かかるとのことでした。この設備はMLAPに対応できるものとのことです。
 しかし、予算的に非常に厳しく、またデータは社内用で計量証明などは考えていないので、分析者の安全が確保できる最低限の設備でもう少し安くならないかと考えています。
 そこで、作業者の安全に十分配慮した最低限の設備(例えばドラフトが1台あるだけでも良いのか?それとも前述したケミカルハザード室が必要か?)とはどいうもので、費用はいくらぐらいかご教授願えませんでしょうか?
 なにぶん、素人ですのでよろしくお願いします。
以上

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No.4887 【A-1】

Re:ダイオキシン類の分析設備について

2004-02-02 19:24:37 埼玉県 / なかよし

ダイオキシン類をJIS規格に従って分析しようとすると、大変な設備投資が必要となります。また、ダイオキシン類標準物質などは、他の標準物質と比較しても高価(0.1ml程度で10万円以上)です。当然、危険な物質を扱いますから安全対策も併せて考えなければなりません。
しかし、社内のデータとしてダイオキシン類分析結果を求めるのであれば、簡易分析によるダイオキシン類分析を考えてみては如何でしょうか?
ただし、精度は落ちます。

簡易分析の方法としてはいろいろありますが、ガスクロマトグラフ質量分析装置(低分解能)、ECD検出器付ガスクロマトグラフ装置、生物検定法(ELISA,Ahイムノアッセイなど)等は、比較的取り組みやすいと思います。しかし、問題は前処理方法です。サンプリングは既にやられていると仮定しますと、採取試料からジクロロメタンによる溶媒抽出と固形物からトルエンを用いたソックスレー抽出が出来る施設であれば十分です。濃縮にはロータリーエバポレーターを用いて行えば特に難しい事は無いと思います。ただし、ダイオキシン類を定量するには必ず標準が必要となります。

定量の方法としては、絶対検量線法と内部標準法がありますが、JIS規格では内部標準法(同位体希釈法)です。これは、ダイオキシン類の標準(12C)とダイオキシン類の同位体(ダイオキシン類を12Cを13Cとしたもの)を用いた方法で、大変精度良く定量が行えます。
簡易分析であれば、ダイオキシン類の標準(12C)のみで、TEF値の高い異性体(2378-T4CDDなど)だけに的を絞って行えば、標準物質の購入費用も安く済みます。ただし、生物検定法であれば2378-T4CDDのみで良い。

最後に、これらのダイオキシン類を扱う際は環境系への流出や分析者の安全を第一に考えて頂きたいと思います。MLAP取得の分析機関は、分析技術だけでは無く安全や環境への配慮を十分に監視・管理されている事が認められ、はじめて認定されると私自身は考えています。

回答に対するお礼・補足

なかよし様
 詳細な解説ありがとうございました。大変参考に、かつ勉強になりました。
 実は社内に四重極型GC/MSが一台あり、これで簡易分析ができればと考えております。とても二重収束型は買えそうにありません。
 問題は前処理ですが、ご指摘のように標準物質として種々のダイオキシン、PCB類が必要で、また溶媒にトルエンやジクロロメタンを使用することから、どこまで安全面に配慮すれば良いのか頭を悩ませているところです。
 最初の質問にも書きましたとおり、ケミカルハザード室を作るとなると4,000万円程度の投資となり、また年間維持費も数百万円かかるとのことでした。活性炭フィルターなどで排ガス処理のできる大きなドラフトが一台あればなんとかなるものなのでしょうか(それでも数百万かかりますが)?ご意見、知見などありましたらよろしくお願いします。
 

No.4903 【A-2】

Re:ダイオキシン類の分析設備について

2004-02-04 09:34:55 埼玉県 / なかよし

ケミカルハザード室による分析であれば、分析工程で発生する有害物質は排気システムにより浄化処理装置を経て一般環境へ排出されます。分析室全体がドラフトチャンバー的な働きをしている事になります。また、分析室内のブランクを下げるために屋外の空気を活性炭で浄化した後、室内へ導入しています。これらをドラフト一台で可能かと言われますと可能とは言い難いところです。
しかし、全く不可能ではないと思います。ダイオキシン類分析工程において、ダイオキシン類が流出する可能性の高い部分(溶媒抽出・ソックスレー抽出・濃縮・クリーンアップ・ダイオキシン類標準液の調整や使用・分析に用いた器具の洗浄)に限って、ドラフト内で作業する事が出来れば安全確保と環境汚染防止は出来ると思います。作業性は大変悪くなります。また、四重極型GC/MSのもロータリーポンプからの排出に対しても活性炭で浄化する事も必要となります。
ダイオキシン類の危険性は目で見る事が出来ませんので、何時しか作業性優先によりドラフト外で分析が行われない事を祈ります。

回答に対するお礼・補足

なかよし様
 引き続き御回答くださいまして誠に有難うございます。取り扱う化合物の性質上、安全には十分な配慮が必要なことが良くわかりました。安全面、作業性、予算の3つをどうクリアするか、もう少しよく考えてみます。

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