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環境Q&A

緩衝作用 

登録日: 2006年04月22日 最終回答日:2006年04月30日 水・土壌環境 水質汚濁

No.16228 2006-04-22 07:40:28 田中

今回は宜しくお願いいたします。


工場で 弱アルカリ性廃水と弱酸性廃水を交互に 沈殿分離槽(沈殿分離層内は中性が前提)へ移送する際に発生する「緩衝作用」という現象について教えて下さい。

ご存知の方、お手数ですが 回答を宜しくお願いいたします。

総件数 6 件  page 1/1   

No.16235 【A-1】

Re:緩衝作用

2006-04-23 18:07:29 筑波山麓

緩衝作用とは、化学大辞典によれば、「溶液がある程度の酸または塩基の添加や消失にもかかわらず、ほぼ一定のpHを維持する作用を言う。一般に弱酸とその塩、または弱塩基とその塩の混合溶液では、この作用が著しい。弱酸HAとその塩BAの混合溶液について考えると、HAは下式のように解離するが、その解離はわずかであり、一方BAは完全に解離するから、この混合溶液中のA-の濃度は塩BAの濃度によって決まる。この溶液に外からH+(酸*)が加えられると、@式の反応は右から左に進み、加えられたH+はHAとなって除かれるから溶液のpH値はほとんど変化しない。
HA⇔H++A-(@式)、BA→B++A-(A式)
また、OH-(アルカリ*)が加えられると、溶液中のH+は中和されて除かれるが、@式の反応は左から右に進み、再びH+を生じるから溶液のpH値はほとんど変化しない。これが緩衝作用である。」とあります(*印部は筑波山麓が付記)。

なお、緩衝作用を理解するためには、pHを理解する必要があります。以下のサイトを参照ください。
http://www2s.biglobe.ne.jp/~nwater/pHnani.htm

次に、少し高度な内容ですが、以下のサイトに緩衝作用が掲載されています。
http://earth.s.kanazawa-u.ac.jp/Environmental_Mineralogy/sato/geohist_5/

高校の化学の教科書、または、チャート式化学等の参考書をいつも座右に置かれることをお勧めします。今更、高校の教科書、参考書なんて考えないで、分からないところが有れば、ページを繰って見ることをお勧めします。化学だけではないでしょうが、やはり高校程度のレベルの知識があることを前提に種々の化学テキストは書かれていることが多いのでちょっとしたことでも分からなければその場で教科書、参考書で理解して先にすすめば自然と自分の化学への理解力が増えていきます。また、やってみれば、昔、高校で勉強したことですから、すぐにピンとくることがあり、勉強も楽しくなると思います。

回答に対するお礼・補足

筑波山麓 様

どうも有難うございます。ご丁寧な回答に感謝しています。

正直なところ、とても難しくて理解に困難中です。(^0^)

私のQに対しての回答として要約させて頂きますと

「沈殿分離槽(沈殿分離層内は中性が前提)に 交互に
ある程度の酸性、アルカリ性が移送されても 沈殿分離層内に緩衝作用という現象が働いて 中性が維持される-」という事で宜しいでしょうか?

よろしければ またご回答を宜しくお願いいたします。

No.16237 【A-2】

Re:緩衝作用

2006-04-23 20:37:47 筑波山麓

>「沈殿分離槽(沈殿分離層内は中性が前提)に 交互に
ある程度の酸性、アルカリ性が移送されても 沈殿分離層内に緩衝作用という現象が働いて 中性が維持される-」という事で宜しいでしょうか?

ある程度誤解があることを覚悟していえば、「田中」さんのいわれるとおりです。

回答に対するお礼・補足

筑波山麓 様

素早いご回答を どうも有難うございます。感謝いたします。

またお手数をお掛けしますが 出来ましたら「ある程度の誤解」といいますのを わかりやすく要約・解説して頂けないでしょうか?

このまま終了では 解消したいのに書き込ませて頂きましたQを解消出来ないままなので どうか、お手数ですが 宜しくお願いいたします。

No.16239 【A-3】

Re:緩衝作用

2006-04-23 23:02:55 筑波山麓

私も、昔、排水処理をしていたので、排水処理には種々の想定外の状況があると分かっております。また、排水の性状は、その工場の特性にもよります。

たとえば、以前に関係していた工場ですが、超純水を大量に使用している工場があり、この工場の排出先が農業地帯で排水基準の取り決めに電気伝導度が定められておりました。電気伝導度は、塩化鉄等で凝集沈殿処理を行うと、必然的に電気伝導度が加算されてしまい、基準を満足させることが非常に困難な状況でした。それで、やむをえず、凝集沈殿処理→活性炭処理した工場排水に基板等を洗浄して帰ってきた超純水(数十μS/cm程度)を混合して電気伝導度を下げておりました。この排水混合液にさらに浄化槽処理後の排水が混合され、工場外に排出されておりました。通常は、基準値を超えることもなく経過しておりました。

ところがあるとき、工場の稼働状況が極端に低く排水量が非常に少ないときに、いつもどおり、排水の電気伝導度を下げるために超純水を加えて浄化槽処理後の排水と混合して排出していたところ、敷地境界外に出たところでpH値が基準値を下回ってしまいました。

このときの排水の電気伝導度を測定したところ、200μS/cm程度と非常に低くなっており、緩衝作用の能力がなくなっていた。これに加えて浄化槽の排水のpHが基準値をわずかに下回っていたことなどが原因でした。ただちに、対処してもらい問題にはならなかったのですが、大変心配したことがありました。なお、現在はこの工場は対策をたて、超純水の混合をしなくても良い状況になっております。

このように、排水の緩衝作用の能力の大小は、排水中に含まれているイオンの種類と量によりますので、例外もありうるということが「ある程度誤解があることを覚悟していえば」という意味と考えていただければ良いと思います。

なお、電気伝導度については、以下のサイトをご覧ください。詳しく説明されております。
http://www.takara-sangyo.co.jp/kouza/dendo.htm

回答に対するお礼・補足

筑波山麓 様

ご回答を どうも有難うございます。本当に感謝いたします。

大体、理解出来たと思われます。
すると A-1で書きました緩衝作用という現象で 大よその場合は 沈殿分離槽内の廃水は中性を維持されるものの、工場の稼動状況、廃水の異変などに影響される事もある-という理解で 宜しいですか?

あと 以前に排水処理をされていたという事なので もうひとつ、お聞きしたいのですが 弱アルカリ性、弱酸性の廃水に 袋に「高分子凝集剤、水処理剤、排水処理剤」と書かれた粉末を水溶液化して注入すると(その水溶液自体は ほぼ中性。ドロっとしています) 弱アルカリ性、弱酸性の廃水のpHは 中性へと傾くものなのですか?

よろしければ お手数ですが またご回答を宜しくお願いいたします。

No.16252 【A-4】

Re:緩衝作用

2006-04-24 19:49:29 筑波山麓

>大よその場合は 沈殿分離槽内の廃水は中性を維持されるものの、工場の稼動状況、廃水の異変などに影響される事もある-という理解で 宜しいですか?
メールで時間を置いてのやりとりですから、なかなか意思の疎通がとおりにくい面がありましたが、「田中」さんの言われるとおりです。しかし、何か異常が生じたときは、原理・原則にかえって対応すると、問題解決に通じることがありますので、応用だけでなく、原理・原則も身につけて置くと良いことがあります。

>あと 以前に排水処理をされていたという事なので もうひとつ、お聞きしたいのですが 弱アルカリ性、弱酸性の廃水に 袋に「高分子凝集剤、水処理剤、排水処理剤」と書かれた粉末を水溶液化して注入すると(その水溶液自体は ほぼ中性。ドロっとしています) 弱アルカリ性、弱酸性の廃水のpHは 中性へと傾くものなのですか?

凝集沈殿処理を行いますと、塩化鉄等とアルカリ液が排水に添加されるので、鉄イオンおよび重金属イオン(陽イオン)、水酸基(陰イオン)が除去されますが、総量としては、アルカリ液のCaまたはNaの陽イオン、およびClイオン等(陰イオン)が残り、排水中のイオン種と量が増えますので、排水の緩衝作用の力が増えます。それで、pHが徐々に中性側に移動していくのではないでしょうか。

一例として、pH調整槽(一次)、反応槽(塩化鉄添加+pH調整二次)、高分子凝集剤添加、沈殿槽と続きますと、緩衝作用でpHが中性側に移動していく時間と、これらの各槽を移動していく時間とがたまたま一致してそのように見えるのではないでしょうか。
高分子凝集剤等の反応に関する資料については、以下のサイトを参照ください。
http://www.mcaqua.co.jp/image/pre1.pdf#search
http://park10.wakwak.com/~nisshin/flocculant.html
以上ですが、よろしいでしょうか。

回答に対するお礼・補足

筑波山麓 様

今回も本当にどうも有難うございます。
ご丁寧な御回答・心遣いに 心より感謝いたしております。とても参考になりました。☆☆

アドバイスを頂いた様に 緩衝作用:応用の答だけでなく、原理・原則の理解を心掛けるつもりです。

ちなみに私の勤務する工場では @pH調整槽でpHを調整した後に ⇒ A高分子凝集剤添加⇒B沈殿槽の手順です。

しかし、@pH調整槽で試験紙でpHを計測してみると アルカリ性反応 または酸性反応のままなのに A、Bに進む場合がよくあるのですが たまにBでpHを計測してみると、 ほぼ中性になっている事があるので それが緩衝作用なのか? それとも高分子凝集剤の作用なのか? それが理解出来なくて 今回、御質問させて頂きました。
(まさか両方に作用性があるのは 全く予想外でした。)


あと、またお手数ですが 下記の質問にも もし宜しければ ご回答下されば とても助かります。

A.緩衝作用というのは 排水が沈殿分離槽内に移送されたら すぐ・即 起こるものなのか? それとも少し時間を経過してから起こるものなのか? どちらなのですか?

B.上記のpH調整槽で酸性の場合は 廃水に消石灰を投入してpHを上げるのですが 消石灰というのは 例えば200kgを投入したら 200kgそのまま、廃水内に残るものなのか? それとも酸の力で廃水内で何kgかは溶けて消滅してしまうものなのか? どちらなのですか?


宜しければ お手数ですが また知識を拝借させて頂いて 出来ましたら御回答を宜しくお願いいたします。

No.16272 【A-5】

Re:緩衝作用

2006-04-25 21:28:12 筑波山麓

>A.緩衝作用というのは 排水が沈殿分離槽内に移送されたら すぐ・即 起こるものなのか? それとも少し時間を経過してから起こるものなのか? どちらなのですか?

A−1で回答しましたとおり、酸またはアルカリが加えられると、HA⇔H++A-(@式)、BA→B++A-(A式)の平衡関係が崩れて、@式の反応が右→左、または左→右にすすみ、pHが維持されます。したがって、緩衝作用が生じるにはタイムラグがあります。しかし、そのタイムラグがどの程度の経過時間を必要とするかは分かりません。槽の大きさ、攪拌強度、流入する排水量、含まれるイオン種と量などによります。

>B.上記のpH調整槽で酸性の場合は 廃水に消石灰を投入してpHを上げるのですが 消石灰というのは 例えば200kgを投入したら 200kgそのまま、廃水内に残るものなのか? それとも酸の力で廃水内で何kgかは溶けて消滅してしまうものなのか? どちらなのですか?

消石灰[Ca(OH)2]は他の無機凝集剤と併用され、汚泥の凝集、沈殿、脱水をし易くするので、良く凝集沈殿で用いられます。消石灰の効用その他については以下のサイトをご覧ください。
http://www.jplime.com/katuyou/katuyou03.html
http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/hyoujun_gijutsu/chromium_free/2-3761_A-A2-3b.htm
http://earth.s.kanazawa-u.ac.jp/Environmental_Mineralogy/new/mc-p010.pdf#search
http://earth.s.kanazawa-u.ac.jp/Environmental_Mineralogy/seika/99clay-dsato/99clay-dsato.html

これによれば、消石灰[Ca(OH)2]は、カルサイト(炭酸カルシウム、CaCO3)、硫酸カルシウム鉱物(CaSO4・1/2H2O)、ポルトランダイト[Ca(OH)2]として、沈殿しています。しかし、全量が沈殿するわけではなく、溶解度は小さいですが、一部Ca+2イオンとして水中に溶解しております。

回答に対するお礼・補足

今回も本当にどうも有難うございます。
毎回、とても参考にさせて頂いています。
心より感謝いたします。☆☆


宜しければ 今回もお手数ですが ご指導をお願いいたします。


pH調整槽に1tで 酸性:pH1の廃水を 消石灰を投入して
pHを 中性:ph6位までに上げるには どの位の量の
消石灰が必要なのか? 大体・大よそで構いませんので
目安がお判りならば ぜひ回答を宜しくお願いいたします。



No.16320 【A-6】

Re:緩衝作用

2006-04-30 08:55:40 筑波山麓

pHメータの測定値はスケール上での値であって、けっしてpH=-log(aH+)「水素イオン活量」やpH=-log(CH+)「水素イオン濃度」ではなく、これら両者の量とあまりかけ離れないように「無理でない値(reasonable value)」となるように設定・測定されたものであるので、単純にこのような計算にあてはまるものかどうか疑問です。

また、廃水にはあなたが質問されたような緩衝作用があり、計算で算出される数値は目安です。実務上は、『バケツに廃水を10L汲み取り、pH計を入れ、攪拌しながら溶液化した消石灰を添加していけば、計算よりもすばやく、かつ正確に求まるのではないでしょうか。』

それでも、知りたければ、これは高校の教科書や試験に出ている問題です。そちらのサイトはたくさんあるので、そちらを参照してください。

以下はご参考に計算してみました。私もこのような計算は久方ぶりなので、もし計算に誤りがあったらご容赦ください。
消石灰[Ca(OH)2]の含有量を100%として計算します。溶解度は温度によって変化し、水酸化カルシウムの溶解度は、0.185(0℃)〜0.077g(100℃)/水100gの間です。したがって、1tの水には少なくとも770g溶解可能です。水酸化カルシウムは全量を溶液化したものを中和に使用すると仮定します。水酸化カルシウムの分子量は74.09、2価の強塩基、電離度を「1」と置きます。

pH=1の廃水の水素イオン濃度=10−1=0.1mol/L。
pH=6の廃水の水素イオン濃度=10−6=0.000001mol/L。
その差0.099999mol/Lの[OH]に相当する水酸化カルシウムは、0.099999/2×1×74.09=3.7045g
1tの廃水では、約3.7kgとなります。

なお、追加の質問はなしにしてください。試験勉強の片手間に回答させていただいているものですから、このように連続で質問されると勉強に支障をきたしてしまいます。



回答に対するお礼・補足

どうも有難うございます。

今回もとても参考になりました。

ご回答頂いたお答えは 全てメモして所有しています。

もう、お時間は割いてもらわなくて結構です。
お勉強の方を頑張って下さい。

心より、感謝しております。☆☆

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