再生水の基準と大腸菌の危険性
登録日: 2006年02月22日 最終回答日:2006年03月25日 水・土壌環境 水質汚濁
No.15074 2006-02-22 11:59:36 栗子
散水施設の設計をしています。
散水に下水処理水を利用する計画をしているのですが、これまでは縛りがなかったのですが、昨年の基準改正で(環境基準等)再利用する場合大腸菌が不検出であることが条件となってしまいました。これまでに施工された除雪のための散水には処理水再生水が使用されている場所もありますが、すべての現場において大腸菌が不検出とは思えません。
紫外線による殺菌を考え、某企業に問い合わせをしたところ紫外線では確実にゼロにすることができないという回答をいただきました。
これまでに紫外線消毒により感染症の報告はされていないとのことでしたが、消毒後も数個は残るということでした。
大腸菌の中にはまれに病原性があり、それが原因で感染症を引き起こすと勉強した程度で、大腸菌については詳しくしりません。
しかし、国で規制されてしまっては確実に大腸菌をゼロにするものは塩素しかなくなってしまいます。
大腸菌の怖さ(どのくらいの割合で感染症を引き起こすか)はどの程度なのでしょうか。
また、大腸菌の中でも病原性のみを滅菌することはできないのでしょうか。
現在大腸菌の処理がネックとなっております。長くなりましたが、宜しくお願いいたします。
No.15081 【A-1】
Re:再生水の基準と大腸菌の危険性
2006-02-22 13:24:35 isisan (
改正に伴い「大腸菌群」が「大腸菌」に変わっています。
これ同じものではありません。
大腸菌群は自然界に広く分布する菌であり汚染の基準としては
利用できますが通常は病原性を示しません。
大して大腸菌は腸内細菌ですから糞便性の汚染がない限りは
通常検出されません。
病原性大腸菌は感染力が強いですよ。
一般的な話ですが,通常の食中毒菌では数万個レベルの病原菌
を取らないと発症しないと言われています。これがあのO−157の
場合だと数百個のレベルで発症すると言われています。
病原性のみ滅菌はまず難しいかと。技術的には全滅させる方が
確実に容易です。
回答に対するお礼・補足
回答いただきありがとうございました。
指摘の箇所を確認いたしました。
私どもが検討しているのは再生水利用の基準(国交省のマニュアルH17.4)でそこには大腸菌不検出となっていました。しかし、再生水の元である処理場では大腸菌群数が基準項目となっています。細菌学の知識がまったくなく恐縮ですが、ヒトへの影響を考慮した場合はやはり塩素しかないのでしょうか。いくつかの企業に問い合わせをしたところ、「再生水を散水に利用するための大腸菌殺菌」には実績がなくこちらとしても根拠がないために設計変更をせざるを得ない状態です。環境に配慮しつつ、再生水を利用するには大腸菌が最大の課題であり、知恵をお借りできたら幸いです。宜しくお願いいたします。
No.15084 【A-2】
Re:再生水の基準と大腸菌の危険性
2006-02-22 14:18:18 みっちゃん (
ちょっと長くなりますけど過去の通達の説明から
*1 厚生省通知 :「再利用水を原水とする雑用水道の水洗便所用の暫定水質基準等の設定について」 昭和56年4月3日. 環計第46号. 厚生省環境衛生局長→各都道府県知事.
*2 建設省通知 :「排水再利用水の配管設備の取扱について」 昭和56年4月27日. 建設省住指発第91号. 建設省住宅局建築指導課長→指定行政庁建築主務部長.
*3 建設省案@ :「下水処理水循環利用技術指針(案)」 昭和56年7月29日. 建設省都下企発第72号. 建設省都市局下水道部長→各政令指定都市下水道局長.
*4 建設省案A :「下水処理水再利用技術指針(案)」 平成3年4月.
*5 東 京 都 :「東京都における雑用水利用にかかる指導指針」 「雑用水利用施設の構造・維持管理にかかる指導要綱」 昭和59年1月24日.
*6 福 岡 市 :「福岡市節水型利用等に関する措置要綱」 昭和54年.
*7 建設省報告書:「排水再利用設備構造指針検討業務報告書」 昭和61年9月. 建設省住宅局.
散水の場合建設省案@では検出されないことがAでは50個/100mL以下になったのがまた元に戻ったのですね。
この後に資料はないですけど厚生省からし尿を原水とした処理水は散水には利用しないよう通達が出ております。
昔から修景・親水用水以外は塩素消毒(保持〜0.2mg/L以上)を行うよう基準はありました。
衛生工学の立場から申し上げますと30年程前までは一部の病原性大腸菌をのぞけば毒性がなかったのですが、ベロ毒素生産菌との交雑により数個で発症させる能力を持つ大腸菌も存在すると言われています。
日本の原状から考えますと、消毒せずに散水に下水処理水を利用する計画は相当危険と考えられます。アジア南部などでは住民の抵抗力も違いますし、クロス・コンタミで日本人が現地人と同じ生活をしますと忽ち下痢などを起こします。まあ二三ヶ月するとなれますけど。
ただ塩素消毒することがそれほど難しいのですか?確かに日本の塩素注入量は管理の考え方がおかしいですけど、オゾン+紫外線より価格的には安価な方法と思いますよ。フランスの水道では使用していますけど逆に価格としては高くなります。
若干資料追加します。
下水処理水の修景・親水利用水質検討マニュアル(案)
(平成2年3月建設省)
No.15095 【A-3】
Re:再生水の基準と大腸菌の危険性
2006-02-22 19:56:13 aqua-play (
を予測する指標です
大腸菌は下水でもきちんと処理した水なら、遊離残留塩素0.2mg/L以上ならほとんど検出
されませんし、遊離残留塩素0.2mg/Lは上水道でもそれくらい以上はあります
ただ下水なので塩素と有機物が結びついたトリハロメタン等発ガン物質が気になるところですが
飲料でもないですし、あまり気にしなくても良いと思いますが
>現在大腸菌の処理がネックとなっております
下水処理場は塩素消毒設備が必ずあると思いますか、最近では塩素をなくべく少なくする為
基準以下なら塩素消毒しないと言うはなしも聞きますが
当方も塩素消毒以外にこだわる、理由がわかりせん。
回答に対するお礼・補足
みっちゃん様・aqua-play様
ありがとうございます。
散水施設を再生水利用の例として市民に公開することを考慮した設計を考えています。確かに塩素消毒をすれば確実に大腸菌群数を抑えることはできますが、当たり前の処理法ですよね。そこで別の処理方法として紫外線を提案した次第です。言葉足らずで申し訳ありませんでした。
回答に「し尿を原水とした処理水は散水に使用しない」とありましたが、国交省のマニュアル(再生水利用)を見直したところ、散水に使用する条件という項目がありました。日本国内なのにいくつか基準があることは不思議です。
No.15103 【A-4】
Re:再生水の基準と大腸菌の危険性
2006-02-22 23:33:39 みっちゃん (
>日本国内なのにいくつか基準があることは不思議です。
>
この場の趣旨とは外れるかもしれませんが、可笑しいことでは有りません。
例えば水の分析ですとJISK0101工業用水試験方法
、K0102工場排水試験方法の様に用途によって分析方法の適合が変わるために分けられています。
厚生労働省は水道の水質を使用目的により下げると考えているのに対し国土交通省は下水道を利用可能に処理を行う。と逆のプロセスで考えています。排水でも、環境省の管轄する水質汚濁防止法と国土交通省の管轄する下水道法では考えるプロセスが若干異なります。
同じ厚生労働省でも水道の水と風呂やプールの水では同一の分析方法が使用されない項目も有ります。
あくまでも歴史の継続性という流れの中で行っていることなので突然変更しますと、断絶みたいなことが起こり反って混乱が大きくなることが多いようです。
回答に対するお礼・補足
お世話になります。
前回の回答でみっちゃん様がおっしゃっていた件ですが「厚生省からし尿を原水とした処理水は散水には利用しないよう通達がでている」とのことですが、これに関しては何をみると確認できるのでしょうか。厚生省に直接問い合わせることも考えているのですが、お分かりになりましたら文献を教えていただけないでしょうか。宜しくお願いいたします。
No.15112 【A-5】
Re:再生水の基準と大腸菌の危険性
2006-02-23 11:09:18 みっちゃん (
すみません、少々時間をいただきます。
何分10年ほど前の物で各県に通達したときの写しをハードで入手した物なので、書庫を探してみます。
なお、本庁に問い合わせるのでしたら健康局生活衛生課の担当になると思います。
うまく担当係に伝われば判ると思いますが。
No.15114 【A-6】
Re:再生水の基準と大腸菌の危険性
2006-02-23 12:11:58 きら (
1.紫外線による殺菌について
これは、紫外線の波長・強度・紫外線との接触時間により殺菌効果が異なります。
夏によく紫外線予防の「UVケアー商品」が売られているのを思い出してみて下さい。
短時間でも強い紫外線に当たると日焼けします。
また、弱い紫外線でも長時間であれば、同じように日焼けします。
これと、同じように、紫外線の強度と時間により殺菌効果が変わります。
※紫外線だけではなく、塩素の場合も、塩素の強度(濃度)、塩素との接触時間により、殺菌効果が変わります。
「確実に大腸菌をゼロにするものは塩素しかない」というのは違うのでは?。
2.大腸菌の怖さについて
人により異なるため一概には決められません。
よく話題になる「O-157」でも、通常の健常な成人であれば、飲食物として摂食しても殆ど問題はありません (中には、多少お腹が痛くなるか、下痢を2〜3回する程度)
お年寄りや乳幼児の場合には耐性が弱いため、最悪の場合には亡くなる場合もあります。
※「0-157」自体に発症する能力があるのではなく、0-157が体内で消化され死滅する際にベロ毒素というものを出すために発症します。
3.大腸菌の中でも病原性のみを滅菌する方法ですが、今のところ開発されていないようです。
4.日本国内なのにいくつかの基準があることについて
私もわからないのですが、次の様な事が考えられます。
・日本の縦割り行政の弊害で、厚生省と国交省で異なる。
・もし、「厚生省」として出されたものであれば、省庁再編前のことですので、現在は廃止(または改訂)されている可能性があります。
5.最近では、ろ過により菌を取り除くシステムも開発されています。
この方法では、クリプトスプリジウムも除去できるとされています。
また、光触媒を用いた技術も急成長しています。
「大腸菌 ろ過」、「光触媒」等で検索してみて下さい。
6.最後に、このQ&Aでも過去に大腸菌に関する質問が多く寄せられています。
大腸菌、細菌等で検索してみて下さい。
No.15269 【A-7】
Re:再生水の基準と大腸菌の危険性
2006-02-27 10:50:56 みっちゃん (
>大腸菌群は自然界に広く分布する菌であり汚染の基準
>大腸菌は腸内細菌ですから糞便性の汚染がない限りは通常不検出
まず大腸菌のことに関してですがisisanさんのおっしゃっている通りで、この点は結構重要な点なので説明させていただきます。平成15年の水質基準改正間では大腸菌群を使用していましたので専門の教育を受けた一部を除いて指標ととらえていました。今でもその違いを理解されていない方が多いようです。以下にそのときの答申内容を挙げておきます。
2.大腸菌
水系感染症の主な原因菌が人を含む温血動物の糞便を由来とすることから、水道の微生物学的安全性確保に向けては糞便汚染を検知することが極めて重要である。すなわち、水道水の品質保証という観点から糞便汚染の検知には高い精度が求められる。その意味から大腸菌は糞便汚染の指標として適当と判断される。
今日まで大腸菌群を指標として用いてきたが、その指標性は低く、本来は大腸菌を用いるべきであった。それでも大腸菌群が採用された理由は、単に当時の培養技術が制約となっていたに過ぎない。今日では、迅速・簡便な大腸菌の培養技術が確立されており、技術的問題は解決されている。従って、水質基準項目としては、大腸菌群に代えて大腸菌とすべきである。
此処で重要になるのは病原性大腸菌に関してなのですが、一般の経口感染病原菌は健康な場合濃厚感染しなければ発症しないことが多いのですが、病原性大腸菌の場合は数が少なくても腸内細菌叢での競争力を考えますと少量の(数十個での発症)摂取で危険が有ります。少なくとも下痢を二三回ではすみません。
又、大腸菌と病原性大腸菌は染色体の染色により分類したときの区分の仕方により分類していますが、殆ど同じ菌ですから生活活性には違いがないので別に殺菌するなどは原理的に出来ません。区別できたら別種になります。つまり色の黒い猫と白い猫を分けるようなモノなのです。
殺菌に関してですが、紫外線殺菌はエネルギー量、波長の問題もありますが、下水再利用水の場合に一番問題があるのはSS分なのです。SS分に妨害されルので、0個/100Lにするならば+オゾン処理となってしまいますが塩素より高くなると思います。フランスの水道では使っていましたが相当高くつくようです。
No.15271へ続く
No.15271 【A-8】
Re:再生水の基準と大腸菌の危険性
2006-02-27 11:06:16 みっちゃん (
濾過ですがクリプトスプリジウムの除去には良いのですが通常の濾過ですといわゆる細菌はどうしても通り抜ける分があります。前記にSS除去も同じ事ですがそこまでの精密濾過を行うとすると高次処理になってしまい上水を作るより手間がかかり当初の下水処理水を利用する計画と言う目的を逸脱してしまいます。
まあ、月に人が行く時代ですから原価を考えずに処理しろと言われればいくらでも処理装置提案いたしますけど何をしているのかとなりませんか。
「厚生省からし尿を原水とした処理水は散水には利用しないよう通達がでている」の件ですが日曜日に探したのですが申し訳ないですが見つかりませんでした。何せA4一枚なので何処かに紛れているのだと思いますが今は探せませんでした。
本庁に問い合わせるのでしたら現在の健康局生活衛生課の担当で発行は平成10年より少し前ぐらいだと思います。当時計画していた雑用水原水に屎尿処理水を混入させるかで騒ぎになったのを記憶しています。計画終了から逆算すると二三年以上はさかのぼらないと思います。
資料追加
下水処理水の再利用水質基準等マニュアル
(平成17年4月国土交通省都市・地域整備局下水道部・国土交通省国土技術政策総合研究所)
http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha05/04/040422/05.pdf
関連追加
シャワートイレ水の規制法律について
http://www.eic.or.jp/qa/?act=view&serial=23881
No.15278 【A-10】
Re:再生水の基準と大腸菌の危険性
2006-02-27 16:37:11 みっちゃん (
私の挙げている資料の解説みたいなものが企業さんのホームページに記載されていますのでご紹介します。
排水再利用・雨水利用システムの設計基準・同解説(抜粋)
http://www.ecoeiwa.co.jp/make/kaisetsu.html
No.15279 【A-11】
Re:再生水の基準と大腸菌の危険性
2006-02-27 16:47:50 厚生省通知改めます (
(参考)
長崎県水の有効利用
http://www.pref.nagasaki.jp/suido/water/riyou.html
・再生水利用のすすめ
http://www.pref.nagasaki.jp/suido/download/pdf/riyou04.pdf
回答に対するお礼・補足
みっちゃん様
いろいろ情報を提供いただきありがとうございます。
これらを参考に勉強させていただきます。
また、疑問が生じたら書き込みするので恐縮ではありますが宜しくお願いいたします。
とりあえず厚生省等になぜ現在の基準(大腸菌群不検出)を提示したのかについてその理由を聞いてみようかと思っております。