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環境ニュース[国内]

文科省、「一家に1枚 水素」ポスターを刊行

エネルギー】 【掲載日】2016.03.17 【情報源】文部科学省/2016.03.11 発表

 文部科学省は、科学技術の理解増進施策の一環として刊行した、「一家に1枚 水素」ポスターについて発表。
 全国の小・中・高等学校等に配布するとともに、全国の科学館や博物館等を通じて、平成28年4月18日(月)〜24日(日)に実施される第57回科学技術週間における配布等を通じて、広く普及を図るとしている。
 なお、科学技術週間ウェブサイトでは、ダウンロード用の画像を公開している。
 同ポスターは、国立大学附置研究所・研究センター、国立研究開発法人、大学共同利用機関法人等から提案のあった「一家に1枚」ポスターに係る企画の一環として制作したもの。「一家に1枚」企画選考委員会における審議結果を踏まえて、今年度は、大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構の大友季哉氏・宇佐美徳子氏・餅田円氏・大島寛子氏から提案のあった同企画が選定された。【文部科学省】

【解説】「水素」
 原子番号1番。水素は陽子1個、電子1個から成る、最もシンプルな構造をした元素です。それゆえに、電子をやり取りしやすく、陽イオンや陰イオン、そして水素同士や他の元素と結合して分子を作るといった、変幻自在な存在です。宇宙で最初に作られた元素である水素は星間物質、恒星、時にエネルギーへと姿を変え、地球に生命をも誕生させました。
 現代社会に目を移してみると、至る所に水素があり、利用していることに気付かされます。生体内では、重量で約2/3を占める水として存在する他、DNAやタンパク質、脂質等生体物質の材料として、またプロトン(H+)としても存在し、様々な生命活動を担っています。物質材料においても、表面の酸化保護、不純物除去などに水素が利用されています。水素の変幻自在な性質を巧みに利用した機能性材料の創製など、水素を観測する技術の発展とともに、積極的に利用する研究も展開されています。
 そして社会経済活動の根幹を担っている化石燃料もまた、元をたどると太陽で作られた水素の核融合による光エネルギーです。太陽光は、地球上の全ての生物が得ることができる唯一のエネルギー源であり、植物などの光合成により有機物へと変換されます。何億年という時間を経て、有機物は化石燃料へと変貌し、人類はエネルギーとして利用することで生活を豊かにしてきました。
 近年、水素社会という言葉が広まり始め、クリーンエネルギーを担うエネルギー媒体としての水素が注目されるようになりました。燃料電池自動車や家庭用燃料電池(エネファーム)など、水素社会が確実に身近になりつつあります。二酸化炭素を排出しない利点がうたわれる一方で、水をベースとした水素サイクルの実現には課題がまだ多く残っているのも事実です。
 このポスターでは、広い時空間にわたってあまねく存在する水素を表現するとともに、未来につながる水‐水素サイクルを示しています。これら全ての構成要素を統一感あるものに仕上げるために、全体を柔らかいイラストタッチでまとめることにしました。そして時空間を変遷していく水素を示すべく、流れを矢印で表しています。宇宙、生命、物質、エネルギー、興味のあるどこから御覧いただいても、読み応えのある内容となっています。
 2016年は英国の科学者、ヘンリー・キャベンディッシュが水素を発見して250年の節目の年です。そして、化石燃料依存から水素社会へシフトしようとする大きな転換期でもあります。水素の科学に触れ、一人一人が水素社会について考えること、そして水素科学のフロンティアに気付き、関心を持っていただけたら幸いです。

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