一般財団法人環境イノベーション情報機構
Car to Carの実現を目指した「鉄スクラップの高度利用化実証事業」 実施へ
【ごみ・リサイクル リサイクル】 【掲載日】2012.12.07 【情報源】環境省/2012.12.07 発表
環境省は、平成24年12月7日、平成24年度新規事業として、鉄スクラップを原料として自動車用の構造用鋼板(高張力鋼)を電炉で試作し、国内初の実用化を目指してその品質について検証を行う実証事業を実施すると発表。鉄については、鉄鋼生産時等に発生する加工スクラップ、自動車などの使用済製品から回収される老廃スクラップが再び鉄鋼生産へと循環利用されており、我が国で年間に製造される鉄鋼製品の原料約1億3千万トンのうち、約5千万トンが鉄スクラップ由来の原料となっている(出典:日本鉄鋼連盟)。
しかしながら、現在、鉄スクラップを原料とした鉄鋼製品は、様々な合金元素を添加した特殊鋼や、それ程高水準の品質が求められない建設用建材などに限られており、自動車や家電製品の鋼板については天然資源である鉄鉱石を主な原料として製造されている。
近年、国内における建設需要の減少等により、鉄スクラップの輸出が増加している(平成2年約40万t、平成12年約280万t、平成23年約540万t。(出典:貿易統計))。
鉄を製造する方法としては、天然資源である鉄鉱石を主な原料として高炉で製造する方法と、リサイクル資源である鉄スクラップを主な原料として電炉で製造する二つの方法がある。
高炉で製造する場合には、エネルギーに加えて、鉄鉱石に含まれる酸素分について、コークス(石炭を蒸し焼きにした燃料)などを使用し除去することが必要なため、多くのCO2を排出する。
一方、電炉で製造する場合には、鉄スクラップを溶かして製品化するためのエネルギーだけで足りることから、高炉で製造する時と比較してCO2の排出量は大幅に低くなり、高炉で製造する場合の25%程度となるとの試算もある。
現在、我が国で製造されている自動車用の構造用高張力鋼板は、軽薄性、成形性、車体衝突時に耐えられる物性など高品質な性能を求められる部材であり、かつ、鉄スクラップに少なからず含有する銅を一定割合以下に抑えなければならないという技術上の課題があることから、鉄スクラップを主な原料としている電炉では製造されていない。
本事業は、近年電炉における製造・管理技術が向上していること、廃車等を含むいわゆる老廃鉄スクラップには鉄の張力特性等を高める銅やニッケル・クロム等の有用金属が含有されており、これらの含有元素を有効活用できることを踏まえ、現在一般的に製造されている高張力鋼と同等以上の品質を目指して、電炉において高張力鋼を試作製造し、必要な品質を満たしているかどうか検証するもの。【環境省】