一般財団法人環境イノベーション情報機構
アオギスが生息できる東京湾再生に向けた報告書案への意見結果公表
【地球環境 海洋汚染】 【掲載日】2005.03.18 【情報源】水産庁/2005.03.18 発表
「豊かな東京湾再生検討委員会」の分科会「アオギス再生特別委員会」は、同委員会がまとめたアオギスが生息できる生態系再生のための環境整備の方向性を示す報告書案への意見募集結果を平成17年3月18日に公表した。アオギスはキス科スズキ目の魚で、海辺の環境破壊とともに減少し、現在は北九州の限られた地域でしか生息が確認されていない「幻の魚」。しかしかつては日本各地に生息し、東京湾でも江戸時代から昭和初期まで、アオギス脚立釣りが初夏の風物詩となっていた。
「アオギス再生特別委員会」は報告書案で、17年11月開催の「第25回全国豊かな海づくり大会」で、東京湾環境再生のシンボルとしてアオギスを放流することを提案するとともに、アオギスが生息できる干潟生態系再生のために、「漁業、文化、環境、生態系に関する専門家が中・長期計画を策定し、取り組めることから実行していく必要がある」と指摘。中期計画の内容としては、10〜30年後までに葛西沖と三番瀬を結ぶ海域や盤洲干潟周辺でアオギスが生息できる自然再生を行うこと、長期計画の内容としては、50〜100年後までに東京湾に注ぐ河川集水域から東京湾までの環境再生計画を軸に国家的な取組みを進めていくことを想定している。
この案に対し寄せられた意見は21件。
意見にはたとえば、「干潟再生と、アオギス放流の関係が理解できない」、「生物が絶滅したら放流して増やせばよい、というのは間違った環境観であり、放流を再考して欲しい」、「研究放流調査の計画や、評価・管理の中身が実質的に検討されないまま、なぜ放流を提案できるのか疑問」といった内容があった。
これらについてはそれぞれ、「アオギスが生息できる環境づくりは干潟再生の取組みに繋がるもの」、「東京湾再生には干潟再生が必要不可欠。アオギス放流はその干潟再生修復調査の一環であり、単にアオギスが絶滅したから放流して増やすというものではない」、「委員会は4回の審議の中で多岐分野にわたる議論を行った。今後は当面の調査として東京湾の干潟浅海域の環境調査を実施するとともに、新たな調査研究委員会でアオギスにとって望ましい生息環境や東京湾の改善策を検討し、長期的視点にたった詳細計画を策定する方針」との考えが示されている。【水産庁】