一般財団法人環境イノベーション情報機構
キリン、東日本大震災で被災した海岸防災林再生に向けた研究で増殖技術を獲得
【エコビジネス 環境技術】 【掲載日】2015.10.09 【情報源】企業/2015.10.06 発表
キリンの基盤技術研究所は、東日本大震災で被災した海岸防災林の早期再生に向けた研究で、マツノザイセンチュウによるマツ材線虫病(松枯れ)に抵抗性を示すクロマツの基本的増殖技術を獲得した。抵抗性クロマツの種子胚からの不定胚誘導と、不定胚からの発芽に成功した。不定胚は細胞などの培養で受精胚と同様の構造に変化した胚を指す。基盤技術研究所は、国立研究開発法人森林総合研究所林木育種センター東北育種場を中心とする「東北地方海岸林再生に向けたマツノザイセンチュウ抵抗性クロマツ種苗生産の飛躍的向上」プロジェクトに2014年4月に参画した。「胚の増殖法」など独自の培養技術を活用し、抵抗性クロマツの種子胚から苗木を大量増殖する技術開発に取り組んだ。
被災した海岸防災林再生には松枯れに強い抵抗性クロマツが求められる。しかし従来技術での種苗生産は供給量が限られ、苗木生産に14年以上かかるとされる。そのためこのプロジェクトで各機関が研究している。技術の確立までには4段階あり、基盤技術研究所は今回、東北地方で実際に育成された抵抗性クロマツ系統の試験で3段階まで達成した。
基盤技術研究所は(1)抵抗性クロマツから採取した種子から完全な植物体に再生する能力を持った分化全能性細胞を誘導(2)同細胞から液体培地で不定胚誘導(3)不定胚の発芽を確認−−までの技術を確立した。次の4段階は発芽体からの植林用苗の試作で、プロジェクトに参画する宮城県林業技術総合センターなどの機関が手掛けている。【キリン(株)】