一般財団法人環境イノベーション情報機構
平成25年度オゾン層等の監視結果に関する年次報告書
【地球環境 地球温暖化】 【掲載日】2014.08.29 【情報源】環境省/2014.08.29 発表
環境省は、「特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律」(昭和63年法律第53号)に基づき、平成25年度におけるオゾン層の状況、オゾン層破壊物質等の大気中濃度等に関する監視結果を年次報告書として取りまとめ公表した。報告書の主なポイントは下記となる。
1 オゾン層の状況
○ 地球規模のオゾン全量は、1980年代から1990年代前半にかけて大きく減少したが、その後減少傾向が緩和し、1990年代後半からはわずかな増加傾向がみられるものの、衛星による観測を開始した1979年に比べて現在も少ない状態が続いている。
○ 南極域の春季に形成されるオゾンホールの規模は、1980年代から1990年代半ばにかけて急激に拡大したが、1990年代後半以降では、年々変動はあるものの、長期的な拡大傾向はみられなくなっている。しかし、現時点では、年々変動が大きいため、オゾンホールの規模に縮小の兆しがあるとはまだ言えず、南極域のオゾン層は依然として深刻な状況にあるといえる。
○ 札幌・つくば・那覇及び南鳥島で観測された日本上空のオゾン全量は、札幌とつくばにおいて主に1980年代に減少傾向がはっきり現れていたが、1990年代後半以降には各地点とも増加傾向が見られる。
○ 地球規模のオゾン全量は、人為起源のオゾン層破壊物質による大規模なオゾン層破壊が起こる前のレベルである1960年レベルまで回復する時期は、北半球では中・高緯度域で2030年頃、また南半球中緯度(南緯35度〜南緯60度)では2055年頃と予測されている。一方、南極域の回復はほかの地域よりも遅く、1960年レベルに戻るのは21世紀末になると予測されている。
2 オゾン層破壊物質等の大気中濃度
○ オゾン層破壊物質としてモントリオール議定書及びオゾン層保護法に基づき生産等規制がなされているCFC(クロロフルオロカーボン)及びHCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)の大気中濃度は、北半球中緯度域(北海道の観測地点)における環境省の観測結果では、CFCは緩やかな減少がみられる一方で、HCFCは急速に増加している。また、オゾン層は破壊しないものの、地球温暖化係数が数百倍から数千倍と強力な温室効果ガスであるHFC(ハイドロフルオロカーボン)の大気中濃度の増加率は極めて大きい。
○ 日本の都市域の代表例として川崎市内で連続測定したCFC、四塩化炭素、1,1,1-トリクロロエタンの大気中濃度は、次第に変動幅が小さくなるとともに、北海道における大気中濃度とほとんど変わらなくなってきている。変動幅の縮小や濃度の低下には、日本における生産の全廃及び排出抑制等が進んだ結果が反映されていると考えられる。一方で、HCFC及びHFCは頻繁に高い濃度で検出されているが、このことは、これらの物質は現在も多方面で利用されていることや、過去に製造・充填された機器装置等から大気中に放出されていることが反映されていると考えられる。
○ CFCの生産と消費は、モントリオール議定書に基づいて先進国では1995年末までに、途上国では2009年末までに全廃されたが、大気中寿命は非常に長いため、今後、CFCの大気中濃度は極めて緩やかに減少していくと予測されている。一方、CFCと比べるとオゾン層破壊係数の小さいHCFCについては、同議定書の規制スケジュールに従って生産・消費の削減が進められている途中段階にあり、HCFCの大気中濃度は引き続き増加するが、今後20〜30年でピークに達し、その後減少すると予測されている。
環境省では、オゾン層の破壊の状況や大気中におけるオゾン層破壊物質等の濃度変化の状況について引き続き監視していくとともに、オゾン層保護法に基づくオゾン層破壊物質の製造数量の規制等の取組を着実に実施していくこととしている。また、HFCについては、今後大幅な排出増加が見込まれており、昨年改正された「特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律」に基づき、フロン類の回収及び破壊の徹底に加え、新たに、フロン類又はフロン類使用製品の製造段階、業務用冷凍空調機器の使用段階における更なる対策の推進を図っていく。【環境省】
記事に含まれる環境用語
- オゾン
- オゾンホール
- オゾン層
- オゾン層の破壊
- オゾン層破壊物質
- オゾン層保護法
- クロロフルオロカーボン
- トリクロロエタン
- フロン
- モントリオール議定書
- 温室効果ガス
- 四塩化炭素
- 地球温暖化係数
- 途上国
- 特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律
- 特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律
- 南極