一般財団法人環境イノベーション情報機構
景観の経済的価値評価に関する2報告書を公表
【環境一般 まちづくり】 【掲載日】2007.06.18 【情報源】国土交通省/2007.06.15 発表
国土交通省は平成19年6月15日、自治体が景観規制を検討する際の参考資料となるよう、景観の経済的価値に関する2つの報告書を公表した。報告は(1)景観規制により形成される、通りや街区単位の景観の経済的価値を分析・評価する手法を示した「景観形成の経済的価値分析に関する検討報告書」と、(2)建築物の高さ制限により守られる景観の価値と、景観を守ったことにより失われる経済的利益の双方を、個々の建築敷地単位で分析する手法を示した「建築物に対する景観規制の効果の分析手法について」。
(1)は、2つのモデル都市(住宅地・商業地)に関するヘドニック法(注1)による分析と、仮想の住宅地・観光地に関するコンジョイント法(注2)による分析を行ったもの。このうちヘドニック法による分析では、歴史的な町並みが残る市街地などでは、景観形成により増加する経済的価値が、高さ規制などで失われる経済的利益を上回る可能性があることが示された。
また(2)は、低層住宅が主体の市街地で中高層マンション建設に対する「絶対高さ制限」を行う場合の効果を、ヘドニック法を利用して分析する方法の基礎を紹介したもの。
敷地面積2000平米と4000平米の土地について、現行の建築規制にもとづき建物を建てた場合(注3)と、高さを15.0メートルに規制した場合の収益下落額と景観保全による地価上昇額を比較した分析例では、敷地面積2000平米の土地では、高さ制限を行った場合の地価上昇額が収益下落額を上回ったのに対し、敷地面積4000平米の土地では、収益下落額が地価上昇額を上回り、規制内容や土地の条件によって、分析結果が変化することが示されている。
また、収益下落額が地価上昇額を上回る事例について、区域全体の価値評価、規制内容の変更、規制以外の措置の検討などを行うことも提案されている。【国土交通省】
(注1)景観形成がもたらす便益が土地資産額にすべて帰着すると仮定し、景観形成による土地資産価値の増加分で便益を計算する手法。
(注2)景観構成要素と支払い意思額を組み合わせた複数の代替案を提示し、アンケート調査により回答者に代替案を選択してもらい、便益を計算する手法。
(注3)敷地面積2000平米の場合は高さ18.8メートル、4000平米の場合は高さ24.0メートル。