一般財団法人環境イノベーション情報機構
「新宿御苑周辺地区、緑化推進で熱環境改善可能」 環境省検討会が改善案提示
【環境一般 まちづくり】 【掲載日】2006.05.30 【情報源】環境省/2006.05.29 発表
環境省の「都市緑地を活用した地域の熱環境改善構想検討会(座長:尾島俊雄・早稲田大学教授)」は平成18年5月29日までに、大規模緑地を中心とした都市の熱環境改善策についての報告書をまとめた。この検討会は大規模緑地を活用した都市の熱環境改善策を包括的・具体的な構想としてまとめるために16年に設置されたもの。
今回の報告書では、新宿御苑で発生した冷気の影響が周辺100メートルまでで薄れてしまうという測定データを報告しつつ、新宿御苑と近接する大規模緑地、明治神宮、赤坂御所、神宮外苑の間を小規模な緑地で繋くと、冷気を地域全体で活用できると指摘。
また新宿御苑北側地区の具体的な改善案として、(1)現状の市街地形状を残したまま、屋上・壁面緑化や街路樹を活用するケース、(2)緑地の拡張や市街地再整備を部分的に行うケース、(3)市街地形状を全面的に変更し、100年前の緑被を再現したケース−−の3案を提示・比較した。
3案を建物や地面が大気に与える熱環境負荷を表す新指標ヒートアイランドポテンシャル(HIP 注1)で評価した結果では、(1)案は現状と比べて日中で1℃前後、夜間で約0.3℃の改善、(2)案は現状と比べて日中で3℃、夜間で1℃程度の改善とされたが、(3)案では日中で現状比5℃前後の改善となったほか、夜間については、建物や地面が全く周辺の気温を暖めないレベルまで達すると分析されている。
なお報告書はさらに、緑化に使う推奨植物リストや、緑を活用した熱・風環境改善手法の具体例をわかりやすく整理するとともに、これらの手法の推進基盤となる地域在住、在勤、在学者への熱環境改善に関する普及啓発策も示している。
(注1)建物や地面などすべての表面から発生する顕熱の街区面積に対する割合。プラスであると都市を暖める方向の効果、マイナスであると都市を冷やす方向の効果を発揮する。【環境省】