一般財団法人環境イノベーション情報機構
オゾン層、2020年ごろから回復傾向に 国環研の数値モデルによる予測結果
【地球環境 オゾン層】 【掲載日】2006.05.19 【情報源】国立環境研究所/2006.05.19 発表
国立環境研究所の秋吉英治主任研究員らは2006年5月19日、同研究所と東京大学気候システム研究センターが共同開発した数値モデル「成層圏化学気候モデル(CCSR/NIES CCM)」を使ったオゾンホール回復予測で、「2020年ごろにオゾンホールの回復傾向が認められるようになり、21世紀半ば頃にはオゾンホールは解消される」という結果を得たと発表した。この「成層圏化学気候モデル」は、オゾンの生成・分解、大気の混合・輸送、太陽光の吸収、赤外放射などが複雑に絡み合って生じる、オゾンの量・分布の増幅・減退要因(フィードバック)の影響を取り込んだ数値モデル。
フロンなどを起源とする塩素によるオゾン分解だけでなく、従来のモデルで充分に考慮されていなかったハロンなどを起源とする臭素によるオゾン分解が考慮されている点に特徴がある。
1990年代半ばから2010年代半ばまでの予測結果では、大規模なオゾンホールの出現が続くことが示されたものの、計算期間を2020年代まで延ばすとオゾンホールの面積縮小、最低オゾン量の増加などが認められるようになり、21世紀半ば頃の予測結果では、南極のオゾン層が1980年レベルに回復するという内容が示唆されたという。
ただし秋吉主任研究員らは、「今後数十年間、オゾン層の脆弱さが続くことには変わりがなく、モデル計算に利用した以上のフロン・ハロンの使用・放出があった場合には、オゾンホールの回復はさらに遅れる」と注意を促すコメントを残している。
研究の内容は2006年5月21日から始まる日本気象学会でも発表される。【国立環境研究所】