一般財団法人環境イノベーション情報機構
諫早湾干拓事業と漁業被害について因果関係認めず 公調委裁定結果をWebページに掲載
【水・土壌環境 水質汚濁】 【掲載日】2005.09.06 【情報源】総務省/2005.08.30 発表
公害等調整委員会は平成17年9月6日までに、国の諫早湾干拓事業と有明海の漁業被害について因果関係の解明を求めた、原因裁定申請事件について裁定結果を同委員会Webページに掲載した。この事件は15年4月16日に、有明海で漁業を営む漁民19人が国を相手取り申請していたもので、申請した漁民らが被ったノリ、アサリ、タイラギ、クチゾコに関する漁業被害は、諫早湾干拓事業で行われた工事が原因であるとして、公害等調整委員会に裁定を求めていた。
17年8月30日付けで行われた裁定は、漁民らの裁定を棄却するもの。
同委員会は諫早湾干拓事業による潮受堤防の締切後に漁業被害が発生していること自体は認め、ノリ養殖の被害は赤潮の増加が要因の1つであると指摘したものの、一方で有明海全体に対する諫早湾干拓事業の影響は、潮汐振幅の減少への影響以外には認めるに足りるはっきりしたデータがないとし、また赤潮もその発生・増加の仕組み自体が未解明で頻発化・長期化の原因を特定するまでに至らない−−と分析。
ノリの漁業被害は諫早湾干拓事業が原因であると肯定できず、タイラギ、アサリ、クチゾコ漁業については、被害をもたらしている要因自体が十分明らかになっていない−−と結論した。
なお裁定にあたって、加藤和夫・公害等調整委員会委員長は「この裁定結果は干拓事業が有明海の漁業環境に影響を及ぼした可能性を否定するものではないが、科学的知見の掌握に努めた結果、現時点では因果関係の有無を確信をもって認定できないと判断せざるを得なかった。更なる調査・研究、的確な対策が実施され、有明海の再生が図られることを念願する」とする談話を発表。この談話も同委員会Webページに掲載された。【総務省 公害等調整委員会】