No.071
Issued: 2017.11.10
ボゴール農科大学のエコレストラン
- 村山 伸子(むらやま のぶこ)さん
- 新潟県立大学人間生活学部健康栄養学科教授。
新潟市生まれ。
東京大学大学院医学系研究科国際保健学専攻修了。
専門は公衆栄養学、国際栄養学。
私が勤務している大学では、インドネシアにあるボゴール農科大学(写真1)と2015年に交流締結を結び、教員や学生の交流をおこなっています。今回は、ボゴール農科大学のエコレストランについて、ご紹介しようと思います。
インドネシアの人口は約2.6億人であり、中国、インド、アメリカに次いで世界第4位です。イスラム教徒が約87%を占め、世界最大のイスラム教国です。インドネシアの島の数は1万3466、島々には多様な言語を話す多様な人々が生活しています(2013年インドネシア地理空間情報局)。
ボゴール市は首都ジャカルタから車で2時間ですが、近年インドネシアの都市部の渋滞は激しく、4時間かかることもあります。ジャカルタより涼しく居住環境もよいので大統領宮殿があり、東洋一の規模のボゴール植物園があります。
ボゴール農科大学は、学生数約25000人、9学部と大学院をもつ大学です。その中に、地域栄養学科を含む人類生態学部があります。ボゴール農科大学には、学生や教職員が利用する食堂としてエコレストランがあります。エコレストランでは、大学の敷地内にある菜園から食材料を収穫し、調理して、提供し、残菜を肥料として、次の生産に使います。レストランの前には、この食の循環を説明した看板があります(写真2)。菜園では多様な植物が栽培されており、バナナの花も重要な食材として使用されます(写真3)。また、養蜂もおこなっています。食を通した生態系のつながりが実感できる場になっています。
一方で、ボゴール農科大学には、全ての学部の4年生の学生が混ざって、2か月間農村に滞在し、村の課題を見つけ、改善策を考え、プロジェクトを立ち上げて実施する、というフィールド実習があります。
私たちは、ちょうど実習中の学生がいる村を訪問する機会を得ました(写真4)。学生にフィールド実習を通して何を学んだかを聞いたところ、畜産学を専攻しているある学生は、
「大学内の授業では、やることが全て決まっていて、それをうまくできるようになることが求められますが、フィールド実習では何も決まっていないところから出発します。自分で村の人と話し合い、観察する中で、課題を見つけて、どうしたら改善できるかを考えなくてはなりません。そして、改善策を村の人に提案し、一緒にやってみるのです。こうしたプロセスがあることを学びました」と言いました。
エコレストランでは食をとおして実際の自然環境と人間の生活との関係を実感し、さらにフィールド実習では両者のよりよい関係を実際の社会の中でどう実現していくのかを学ぶ機会となっているようです。いずれも体験に基づいて自ら考えることを重視していることが伝わってきます。学生時代に多くの体験をして、深く考えることは、その後の社会での仕事の仕方に大きなプラスになると感じました。
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(記事・図版:村山伸子)
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