No.025
Issued: 2014.01.10
夢は「バラトン・グループ」日本版!
- 枝廣淳子(えだひろじゅんこ)さん
- 環境ジャーナリスト・翻訳家・幸せ経済社会研究所所長
『不都合な真実』(アル・ゴア氏著)の翻訳をはじめ、環境問題に関する講演や執筆、企業コンサルティング、異業種勉強会等を通じて「伝えること」でうねりを広げつつ、変化を創り、広げるしくみづくりを研究。社会のさまざまなセクターによる「つながり」と「対話」で、しなやかに強く、幸せな未来の共創をめざす。
こんにちは! 枝廣淳子です。どうぞよろしくお願いします。
環境の分野で主に「伝えること・つなげること」に取り組んで15年ほどになります。その前は同時通訳者でした(最初に日本にglobal warming という言葉が入ってきた会議でも通訳をしていました。環境省の方々と「日本語はどうしましょうか?」と相談したことを覚えています!)。
英語でも(ある程度の)コミュニケーションができるということで、日本だけではなく、海外での活動も展開しています。その経験から、「日本にもあったらいいのになあ」と思うグループをご紹介したいと思います。
『成長の限界』を書いたメドウス夫妻が1982年に始めた「バラトン・グループ」です。システム思考・システムダイナミクスの専門家を中心に、持続可能性に関わるさまざまな研究者や行政・NGOなどからなるグループで、アジアやアフリカ、南米など途上国のメンバーもたくさんいます。本拠地もオフィスも事務局もない、30年以上前からのバーチャル・ネットワークなのです。
現在、メンバーは数百人いて、ふだんはメーリングリストで情報・意見交換をしていますが、毎年秋にハンガリーのバラトン湖畔で1週間の合宿を行っています。既存メンバーと新しいメンバーとして選ばれた50〜60人ものさまざまな専門家・研究者・活動家が世界各地から参加します。その年のテーマを入り口に、朝から晩まで議論し、コーヒーやワインを片手に夜まで情報や意見を交換し、あちこちで共同プロジェクトの立ち上げや打ち合わせが展開する、とても刺激的でユニークな場です。
バラトン・グループへの参加は招待制で、私は幸いにも2002年から毎年合宿に参加させてもらっています。毎年だいたい20〜30ヶ国から50〜60人が集います。
この合宿での唯一のルールは、「自室にはこもらないこと。あらゆる時間を、メンバーとの会話に充てること」。これが唯一のルールでした。3度の食事、休憩時間、夜の時間など、同じ人とばかり話をしないよう、お互いに声を掛け合いながら、いろいろな人といろいろな話をします。5日間とはいえ、すべての参加者と話をするのは難しいですが、それでもいろいろな新しい出会いや情報に触れ、いくつもの興味深いコラボレーションの可能性が浮かび上がってくるのは楽しいものです。
日本でもいろいろなセミナーやシンポジウムはありますが、「聴衆のために」ではなく、研究者や実践家が自分たちのために、そしてお互いのために、ふだんの仕事や活動から離れて、5日間もの時間を使ってじっくりと考え、議論し、語り、それぞれの次の活動を推進していく原動力となるような機会はあまりないかもしれません。
バラトン合宿で参加者が持ち寄り、交換し合っているのは、単なる情報や知識だけではなく、刺激やモチベーション、活動を飛躍させるためのアイディアやヒント、落ちこんだりうまくいかないときのサポートや励ましなどなのです。
いつか、バラトン・グループの日本版ができたらなあ!と夢見ています。
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(記事・写真:枝廣淳子)
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