<妻の一言 〜豆腐作りと「トウフバーガー」〜>
今回ご紹介したイングリッシュアイビーの調査で、大学生ボランティアのエイミーさんと知り合いになりました。エイミーは私と同年代の女性で、ベジタリアンでした。作業をしながらエイミーといろいろ話をしていて、たまたま豆腐の話題になりました。
「モモコは豆腐が作れるの? 作り方を教えてくれない?」
「じゃあ、一緒につくってみる?」
早速、週末に他のボランティアも誘って「豆腐パーティー」をすることになりました。
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イングリッシュアイビーの調査でエイミーさんと
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調査したトレイルの入口で。原生林には大木が立ち並んでいました
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このカリフォルニア州北部には、いわゆる「ヒッピー」のような人たちが多く、ベジタリアンといっても特別な人たちという印象はありません。エイミーは肉が嫌いなのではなく、家畜の扱いへの抗議からベジタリアンになったそうです。エイミーによれば、アメリカでは家畜を早く成熟させたり肉質をよくするために、大量のホルモン剤が使われているそうです。
主人は、アメリカの豚肉で作るとんかつが大好物でした。ヒレ肉が1ポンドあたり2〜3ドルですので、衣に使う日本製のパン粉の方がずっと高いくらいです。分厚いのにジューシーで柔らかく、揚げたてのとんかつは確かにとてもおいしいものでした。ホルモン剤を使えば成長が早まるため、出荷までの期間が短縮できます。そのため飼料代などのコストを抑えることができ、かつ家畜も若いために肉質もやわらかいというわけです。
主人は、「アメリカに肥満が多いのも、食肉などへの残留ホルモンが影響しているに違いない」などと言っていました。その真偽のほどはわかりませんが、確かに肥満が蔓延し、日本ではあまり考えられないような太り方をしている人も大勢います。
ところで、私たちの豆腐作りは試行錯誤の連続でした。「豆乳」と「にがり」から作る豆腐ですが、にがりはネット販売で入手することができました。問題は意外にも豆乳の方でした。
はじめに試したのは、飲料として販売されている豆乳でした。にがりを混ぜてもほとんど固形物ができない上に、その豆乳は「バニラ味」でした(チョコレート味などもあります)。
そこで、今度は自然食品の店で香料無添加の豆乳を買ってきました。ところが、これもほとんど固まりません。薄めてあるのか、凝固しないような薬品が入っていたのかもしれません。
仕方ないので、豆乳を大豆から作ることにしました。幸い、インターネット上で豆乳の作り方を見つけることができました。ミキサーですりつぶしてから煮て漉すというもので、一見簡単そうでした。
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ミキサーですりつぶします(このあとミキサーが壊れました) |
大豆は納豆を作るため、アジアンマーケット(アジア系の食材を扱う小さな食料品店)で大目に買ってきていました。ただ、「ミキサー」がありません。購入しようとネットで調べましたが、見つかりません。スーパーマーケットで探したところ、アメリカでは「ブレンダー」と呼ばれていることがわかりました。それも安いのは30ドル(約3,300円)くらいです。早速購入してみましたが、何と2〜3回使っただけでモーターが焼き切れてしまったのです。
「これは不良品だよ」
主人は早速スーパーに返品しました。買ったばかりということもあり、すぐにお金を返してもらえました。そのお金でもう1台購入しましたが、結果は同じでした。
「ブレンダーはいいものを買わないと駄目よ」
マンモスケイブのボランティアコーディネーターのメアリーアンさんに言われました。
確かにミキサーはピンキリで、高いものはお値段も一桁違います。私たちが買ったものでは、せいぜいシェイクかフルーツジュースくらいしか作れないそうです。
今度はカスタマーサービスに電話をして、修理をお願いすることにしました。
主人が電話したところ、「あんまり固いものをすりつぶしてはだめなのよ」と諭された(?)そうです。
それからしばらくして、マンモスケイブのルームメイトが、小さいフードプロセッサーを買ってきました。みじん切りしかできない簡単なものですが、私たちの落胆振りを見かねて、「これを試してみたら?」と貸してくれました。
フードプロセッサーで大豆を刻んでから、ミキサーにかけてはどうか、というわけです。水に浸した大豆をフードプロセッサーにかけると、ちょうど引き割り納豆のようになります。それをミキサーに入れて、恐る恐るスイッチを入れます。水も多めに加えることにしました。今度はモーターがよく回り、焼き付く臭いもしません。
こうして、ようやく初めての豆腐ができました。まだまだできは悪くすぐ崩れてしまいます。できた豆腐の量も思ったよりずっと少ないものでした。それでも、食べてみると日本で売られている豆腐よりずっと大豆の味がしました。それに、豆乳を煮るときの匂いが何とも言えません。豆腐がうまくできるまでに、何度も何度も、つぶし損ねた大豆を食べましたが、これもいい思い出になりました。カリフォルニア州に来てからは、非遺伝子組換えのオーガニックダイズも手に入るようになりました。
ところが、うまく豆腐が作れるようになってから、ちょっとした問題が浮上しました。当然のことではあるのですが、豆腐を作ると大量のおからが出ます。それも、すりつぶしがうまくいかないと、豆粒がかなり残ります。このおからを使った卯の花をどんぶり一杯食べるのは相当大変でした。ネットでも、豆乳愛好者が豆乳メーカーから出るおからの処理で困っているような投稿が寄せられていました。
「おからでソーセージが作れるらしいよ」
主人がなにやらあやしいレシピを見つけてきました。
大豆もタンパク質だから、ベジタリアン向けの「肉製品」の材料として使われているそうです。つなぎは? 割合は? いろいろ試してみることにしました。
結論から言うと、おからから作るハンバーグが一番おいしいように思えました。それも、「オカラバーガー」がいいようでした。トマトケチャップ、マスタードをたっぷりつけて、レタスとチーズと一緒にパンに挟みます。適度に豆粒が残っているので、歯ごたえがあります。鶏肉を練りこむ方法もあるようですが、そのままの方が大豆の風味が生きるようでした。
エイミーたちとのパーティーでは、あらかじめ作っておいたオカラバーグで、各々「ベジ(タリアン)バーガー」をつくり、それを食べながら豆腐作りをしました。バーガーも豆腐もなかなか好評でした。
ご参考まで、以下に私たちの豆腐の作り方をご紹介させていただきます。これは、以前「北海道有機農業協同組合」のホームページに掲載されていた、手作り豆腐の作り方を参考にしたものです。自己流の部分も多く、レシピの書き方にもいい加減なところもあると思いますが、あらかじめご容赦ください。
<自己流豆腐の作り方>
(材料)
乾燥大豆 300グラム
にがり 約9グラム
1. 大豆300グラムをきれいに洗い、夏は12時間、寒い季節は24時間程度水につけます。大豆は驚くほどふやけて大きくなるので、少し大きめのボウルなどに入れて水をたっぷり入れます。途中で水を2〜3回交換します。
2. 1の大豆に水を少量加えすりつぶしてクリーム状にします。まずフードプロセッサーで荒く刻んでからミキサーにかける方が確実かと思います。最初は豆を少なめに入れ、徐々に量を増やし、水を少しずつ加えながらすりつぶします。
【ポイント】
水を大目に使った方が、ミキサーには負担が少ないようです。ただ、水が多すぎると、次にこの液体(生呉(なまご)と言うそうです)を加熱するときに苦労するので、次の3で加える水の量で調整します。水が多すぎると鍋に入りきらないので注意が必要です。うまくクリーム状になると豆腐の量が増え、おからの舌ざわりも良くなります。
3. 2の生呉を大き目の鍋に入れ、水1.5リットルを加え、強火にかけます。2で水が増えてしまっている場合には、鍋の大きさに合わせて水の量を調節します。沸騰してから8〜10分ほど煮ます(豆乳のいいにおいがしてきたらそろそろ沸騰する頃です。沸騰するときは急に泡が出てふきこぼれますので、沸騰しそうになったところで弱火にするといいと思います)。
【ポイント】
焦げやすいので厚手のなべを使い、鍋底をこそぐように木べらでかき混ぜます。加熱すると泡が出てかなり量が増えますから、鍋はなるべく大きなものがいいと思います。
4. 3を熱いうちに漉し袋に入れて絞ります。絞り汁は冷めないように手早く次の鍋に移します。この絞り汁が豆乳、絞りかすがおからです。
【ポイント】
とにかく熱くなりますから注意してください。漉し袋は、手ぬぐいを袋状に縫い合せてつくりました。絞りづらいですので、2段重ねの蒸し器があれば、その上段に漉し袋を置いて、木べらで押しながら絞ると、作業が楽だと思います。
5. 豆乳を弱火にかけ、70℃から75℃くらいに温めます。適温になったところで、にがり9グラムをカップ半分くらいのぬるま湯に溶いて、豆乳に少しずつ加えながら、静かに十文字にかき混ぜます。しばらくすると澄んだ部分が出てくるので、そのまま15分くらい置いておきます。
【ポイント】
4の作業が手早く終わると、大体80度くらいになります。その場合には、加熱しなくて大丈夫です。9グラムのにがりの量は、小さじ2杯弱です。加えたにがりは、後で豆腐を水につけて抜いてしまいますので、足りなくさえなければ量はそれほど気にしなくてもいいようです。私たちは通信販売で500グラム入りのにがりを購入しました。湿気ると溶けてしまいますので、なるべく小さい袋の方が扱いやすいようです。液体のにがりもあるようですので、その方が便利かもしれません。
6. ざるに布を敷き、そこに固まった豆乳をおたまですくい入れます。すべて入れ終えたら、布を豆乳の上に畳み込むようにかぶせ、その上から重しを乗せます。重しは鍋やボウルに水を入れたものを代用しました。大体15分くらいで固まります。
7. 固まったら取り出して、水に入れてさらします。約1時間でにがりが抜けます。作りたてを食べた方がおいしいと思いますが、保存する場合には、豆腐を水につけて冷蔵庫に入れておきます。
<オカラバーグの作り方>
これも完全な自己流です。オカラバーガー用に作っていますので、ハンバーグのようにして食べるには少し物足りないのではないかと思います。その際は、お肉を加えたり、ソースを工夫したりしてみてください。
(材料)
おから
つなぎ(小麦粉、パン粉、卵など)
1. おからの「でき」を見ながらつなぎを入れます。大豆の粒が多く残っているときはつなぎを多めにするといいと思います。小麦粉はつなぎとして強力ですが、入れすぎると粘りが出てきてしまいます。パン粉またはちぎったパンを入れるとまとまりやすくなります。私は卵を必ず入れましたが、あまり入れすぎると硬くなってしまうようです。
2. 整形したものをオーブンに入れます。鉄板にクッキングシートを敷いてハンバーグを並べるときれいに焼きあがります。180度から200度で10分から15分程度焼きます。焼きすぎるとぱさぱさしてしまいます。あまり焼き目はつかないようです。
3. 焼きあがったオカラバーグをパンに挟みますが、その際レタス、チーズ、マスタード、トマトケチャップを好みで加えます。ピクルスなんかをはさんでもいいと思います。
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